2024年2月号【編集長から】

10年前、『中央公論』の人口減に関する座談会に登壇し、「独身の僕が一番肩身が狭い」とやや控えめだった小泉進次郎氏が、今号のインタビューでは二児の父として育児と政治活動の二兎を追う日々の喜びと悩みを大いに語った。

★父の純一郎・元首相は在任中、結婚4度目(現在は5度目)だったドイツのシュレーダー首相から「なぜ結婚しないのか」と問われ、「また離婚するのが嫌だから」と答えた。ドイツでは熟年離婚・再婚には至らない別居や同居も多く、自由奔放な恋愛観では、結婚にこだわらないフランスと変わらないとも聞いた。近年、ドイツは子育て世代の働き方改革を、フランスは既婚、未婚を問わない手厚い子育て支援を行い、出生率は上がった。移民で人口減をカバーする発想は、多様性を重んじたスウェーデンやオランダでの移民排斥を掲げる極右政党の台頭を見ると悩ましい。人口こそ国力とばかりに多産を定着させたイスラエルとパレスチナの対立も暗い影を落とす。

★「産めよ殖やせよ」の反省から政府の腰が引けている日本が、ハンガリーのオルバン政権のように出生率を上げるために家族観、結婚観を経済支援で誘導する姿は想像したくない。大切なのは押しつけではなく、個人が自分事として人口減を考える姿勢ではないか。今号の特集がそのヒントになれば幸いである。

編集長:五十嵐 文