2024年10月号【編集長から】

★卒業まで半年ほどとなった大学4年生終盤のこと。学生生活が残り少なくなったことに焦燥感を覚え、一足先に故郷で就職していた友人に、今のうちに何をしておくべきか尋ねました。電話口の彼はのんびりとした口調で、「そりゃあのう、徹夜でゲームとかしとりゃあええんよ。就職したらできんくなるんじゃけえ」。慶應義塾大学の4年間を広島弁で貫き通した男はさすが腹が据わっていると感心するとともに、肩の力が抜けた私はそれから毎晩ひたすら徹夜でゲームを......し続けたわけではありませんが、彼の言葉には救われる思いでした。

★そんなやりとりは今や牧歌的なようです。「令和の大学生のリアル」の座談会で驚いたことの一つが、今の大学生の忙しさ。授業の出席要件が厳しくなり、仕送りが減ったためアルバイトを頻繁に入れねばならず、3年生の夏休みは志望業界でインターン。社会人顔負けのスケジュールを聞くと、四半世紀前の大学生活からの変わりように、なんだか申し訳なくなりました。★2008年、熊本県知事選で当選した直後の蒲島郁夫先生に取材し、政治学者として自らの選挙の勝因を分析していただきました(「自民党の推薦を固辞した『理論』」)。知事を4期務めた後も、フレンドリーなお人柄はそのまま。16年前から変わらないことに嬉しくなりました。

編集長:田中正敏