2025年6月号【編集長から】
★これまで新書4冊の編集を担当した磯田道史先生のお話をうかがっていると、いつもその発想に驚かされます。歴史人物の評価が写真の見た目に左右されているのでは――。今号の巻頭インタビューでは、歴史人物におけるルッキズムの存在を指摘しています。たしかに坂本龍馬の革新的なイメージと、右手を懐に入れて洋靴を履き颯爽と立つ有名な写真の姿とは、切っても切り離せません。史料に基づきながら、次々湧き出てくる自由な発想に、今回も目から鱗が落ち続ける貴重な時間でした。
★現代の政治家も、見た目重視の価値観とは無縁でいられません。しかしこの場合重要なのは美形か否かというより、ひと目で伝わる個性の有無。前月号の表紙にも掲載したトランプ米大統領の場合、シルエットだけでも、庇(ひさし)のように突き出た髪型で誰かすぐ分かります。見た目でも他を圧倒する強い個性は、政治家としての武器に違いありません。
★雑誌でまず目に飛び込むのが表紙です。2012年4月号より中城デザインさん、22年1月号以降は同社から独立した土田鉄平さんが小誌の表紙デザインを担当されました。通巻1700号となる次号からは装いを新たにいたします。13年以上にわたり親しまれたデザインとのお別れは寂しいものですが、月刊『中央公論』の新しい「見た目」にもぜひご期待ください。
編集長:田中正敏
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