オーストラリア首相、中国の監視を示唆
二〇〇九年三月二十八日[秘]アメリカ国務省発
自分自身を「中国に関する猛烈な現実主義者」と呼ぶオーストラリアのケビン・ラッド首相は、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官に対して、中国への「二国間並の激しさを持つ多国間の関与」が必要だと主張した。
中国を国際社会のなかにうまく統合することで、中国により大きな責任を与えると同時に、もしすべてが悪い方向に進んだ場合には、軍事力を展開する用意をするべきである。そう語ったラッドは、オーストラリアの情報機関は中国の軍事的近代化を逐一監視していると述べ、オーストラリアの次年度の防衛白書が海軍の能力増大に焦点を当てているのは、中国の軍事力展開能力の増大に対応するためであることを示唆した。
ラッドは、自身が二〇〇八年四月に北京大学で行った演説のコピーを長官に送ることを約束した。その中で彼は、中国の考える調和的な世界はあくまで「康有為」の哲学の延長線上にあり、西側諸国の言う「自らが責任ある利害関係者となる」という概念とは両立しない、と論じた。
グーグルへの攻撃は中国政府の指示
日時XXX[極秘]北京大使館発
その高い地位にある情報提供者は、最近のグーグル・システムに対する侵入を組織しているのは中国政府であると主張した。その人物によると、綿密に立てられた作戦は、政治局常任委員会レベルで指揮されたそうだ。
別の情報提供者は、中国政府のなかの最高指導者の一人が、グーグルの競争相手のバイドゥ(訳注・百度)と積極的に動いているという。
グーグルの中国語サイトGoogle.cnを、検閲であると指摘されているハッカー行為によって取りつぶそうとした中国は、中国のインターネット使用者の間におけるグーグル社によるサービスの人気の高まりと、アメリカ政府とグーグルが協調して動いているのではないかという点を懸念している。
ナショナリズムに訴えること。それがフィルターにかけられていないウェブ・コンテンツを提供しようとするグーグルに対抗するために取られた、中国政府の選択肢だと思われる。
また技術産業に携わる情報提供者は私たちに、外国企業に対する中国政府の介入は広範囲にわたっており、現在アメリカの親会社に対してなされている報告は、しばしば実態を下回っていると語った。
イタリア首相とロシア首相の不適切な関係
二〇〇八年十一月十九日[秘]ローマ大使館発
あらゆる問題に関して、ベルルスコーニ首相と私たちが綿密な協力関係をあらためて結ぶには至っていない。一方、ベルルスコーニとプーチンは密接な個人的関係を結んでいる。それによって、NATO(北大西洋条約機構)拡大に向けての大西洋越しの支援とクレムリンの最悪の衝動を抑えようとする「私たち(アメリカ)の努力」を弱めようとする、ほとんどあらゆるロシアの策謀をイタリアが支持するという形になっている。
ロシアとイランに対する、国際社会とアメリカの態度を軟化させようとするイタリアの裏切り者的な態度は、混乱をつくり出し、世界の安全保障を危機に陥れるだけだということを、ぜひあなた(コンドリーザ・ライス国務長官)には、ベルルスコーニに思い知らせてほしい。
ベルルスコーニはプーチンとの緊密な個人的関係(財政的なものを疑う者もいる)によって、クレムリンが繰り出すあらゆる策謀を、疑うことなく後押ししている。イタリアのロシア政策はすべて彼の個人プレーである。彼がロシア側の対話相手から信頼と好感を獲得するためになされているのである。外務省からの戦略的助言を、彼は一貫して拒否し、自分のビジネス・パートナーの意見を聞いている。そしてそのお仲間の多くは、ロシアの対ヨーロッパ・エネルギー戦略に深く関わっている。
その近視眼的なロシアへの執着によって、ベルルスコーニはNATOとOSCE(欧州安全保障協力機構)に取って代わるヨーロッパの新たな安全保障機構の構築を呼びかけるメドベージェフの背後支援にまで乗り出した。ロシアの感受性を尊重して、ウクライナとグルジアのNATO加盟の動きを停止させるべきだと公言した。
もっとも厄介なのは、ベルルスコーニが自分自身を、EU内部におけるアメリカとロシアとの「架け橋」に見せようとしてきたことだ。実際問題としてこれは、ロシアに対するEUの立場を弱め、またモスクワの最悪の衝動を封じ込めようとするアメリカ主導の努力を脱線させるために、イタリア政府が常に策略をめぐらせるということを意味してきた。
サルコジ大統領は「裸の王様」
二〇〇九年十二月四日[秘]パリ大使館発
サルコジ大統領のグローバルな野心に対して、政治的にも、個人的にも、思想的にも、ブレーキの役を果たす者は一人もいない。「ノー」を言う者は誰もいない。
フランス国内において彼は、彼の政策を採用しようとする党指導者たちに報酬を与え、自分に反対する意見を持つ反対者はすべて脇に追いやっている。実際、彼の政権の初期に目立っていた何人かの「お気に入り」の閣僚は、サルコジにたてついた後、閑職に左遷された。
これに対して、ヨーロッパ問題担当国務大臣ピエール・ルルーシュは、現在の地位を維持することと引き換えに、長らく公言してきたトルコのEU加盟への支持を、意図的に封じ込めることになった。一方、外交顧問(国家安全保障顧問に相当)ジャン・ダビッド・ルビットは、広い外交知識と温和な人柄によって、主要プレーヤーに留まっている。またクロード・ゲアン官房長官などの助言者たちも、ますます公的な役割を演じている。ただ彼らはサルコジにさまざまな進言をしているものの、行動的な大統領に大きな影響を及ぼしているように見える者はほとんどいない。
就任から二年。エリゼ宮にいた老練な主要スタッフの多くが、彼らの「勤勉さの報酬」として昇進し、名誉ある役職についている。したがって、皇帝がちゃんと服を着ていないことを、新顔たちが前任者よりも積極的に指摘することができるかどうかについては、疑問符がつく。