ロシア的『指輪物語』
では、ソ連では『指輪物語』はどのように読まれてきたのだろうか。
本国イギリスで『指輪物語』の初版が出たのは1954年。その評判はすぐにソ連にも伝わり、60年代には翻訳が地下出版で流通していた。82年、ついに三部作の第一作『旅の仲間』が、キスチャコフスキーとムラヴィヨフによる訳で公式に出版される。このときはまだ当局から完訳版刊行の許可が下りず、一部カットされていた。その後、89年に第一部の増補版が出て、第二部と第三部が刊行されたのは91年と92年である。
上田洋子(ロシア文学者・ゲンロン代表取締役)
〔うえだようこ〕
1974年東京生まれ、大阪育ち。文学・演劇の研究とともに現代ロシア文化についての情報発信も続ける。共著に『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』『歌舞伎と革命ロシア』など、監修に『プッシー・ライオットの革命』。訳書に『瞳孔の中――クルジジャノフスキイ作品集』(秋草俊一郎氏との共訳)がある。
1974年東京生まれ、大阪育ち。文学・演劇の研究とともに現代ロシア文化についての情報発信も続ける。共著に『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』『歌舞伎と革命ロシア』など、監修に『プッシー・ライオットの革命』。訳書に『瞳孔の中――クルジジャノフスキイ作品集』(秋草俊一郎氏との共訳)がある。