昨年十二月に行われた衆院選での勝利をうけて、第三次安倍内閣が発足した。新たなスタートを切った安倍政権は、懸案の景気問題など日本の抱えている様々な課題に対して、この一年、どう向き合っていくべきか。ゲストの発言を踏まえて、キャスター二人が語り合った。
◆アベノミクスへの「期待」
「(衆院選で)安倍首相はアベノミクスという具体的な政策を示して戦った。それに対抗するビジョンが野党から出てこなかったのが大きい」=世耕弘成・官房副長官(昨年十二月十五日)
近藤 昨年末の衆院選では与党が圧勝し、安倍首相が引き続き政権を担当することになりました。国民の最大の関心事は経済問題でしたから、与党の経済政策は、一応の信任を得たものといえます。
玉井 ただ、国民の多くはアベノミクスのもたらす果実を実感できていなかったようです。実際、安倍首相も「アベノミクスは道半ば」と言っているわけですし、「現状には満足していないが、今後には期待している」というのが、今回の選挙で示された民意だったのではないでしょうか。
近藤 これに対して、野党はアベノミクスに代わる経済政策を打ち出すことができなかった。世耕氏の指摘にはもっともなところがあると思います。
玉井 民主党は小選挙区の六割にしか候補者を立てられず、政権の受け皿になるという野党第一党の役割を放棄した。選挙の緊張感を失わせた民主党の罪は重い。
「(消費税率が一〇%に引き上げられる)二〇一七年四月までに景気が回復していないと、国民から厳しい審判を受けることになる」=山際大志郎・経済産業省副大臣(昨年十二月十七日)
近藤 安倍首相は、昨夏頃からの景気減速などを受け、当初は今年十月に予定していた消費再増税を延期したわけですが、二〇一七年四月には必ず引き上げると明言しています。それまでに何としても景気を浮揚させねばならないわけで、今年はいよいよアベノミクスの成果が問われる年になります。
玉井 来年七月には参議院選挙も控えています。国民の期待にこたえるために残された時間はそれほどありません。アベノミクスの成果を目にみえるかたちで示すことが重要です。
◆カギ握る今春の春闘
近藤 その意味では、今年の春闘に注目しています。二月中旬には労組側が要求を経営側に提出し、賃金交渉がいよいよ本格化します。焦点は物価上昇分を上回る賃上げが実現するかどうかですが、その点、大企業に関してはかなり期待ができそうです。問題は労働者の七割以上が働いている中小企業で、その業績は地域や業種によって「まだら模様」というのが実態です。アベノミクスの恩恵をどれだけ多くの国民に行き渡らせることができるかは、引き続き大きな課題です。