メガバンクは厳しいが、地方銀行に意外な可能性あり
勝間 まず言わなければならないのは、これから予測することは、たぶん?当たらない?ということです。
小幡 いきなり勝間節ですね。(笑)
勝間 だってそうでしょう。一〇年前にリーマン・ショックを予測できた人はいません。三年前くらいから予測していた人はいましたけど。
小幡 確かにバブルでも、「今がバブルだ」というのは分かります。でもそのバブルがはじけるタイミングは分からない。投機のチキンレースにみんなが乗ったというのは分かっても、降りるべきタイミングは分からない。たまたま政府が「この企業は倫理的に救済するわけにいかない」と考えて、いずれにせよいつかは潰れる企業をそのまま倒産させただけで、「飛び降りろ!」という雰囲気になるかもしれない。これは予測しようがありません。
勝間 だから、「未来というのは予測するものではない。自分で作るものだ」と普段から考えていないと、リスクに対応できないと思うんです。
江上 今だって、ほんの二、三年の間に、上場して一世を風靡していた経営者が破産までする世の中です。これからはさらに変化の激しい時代が来るわけだから、それくらいのリスク感覚は持っていてほしいと。
勝間 そうです。そのうえで本題に入りますと、日本の金融業は、もうすでに世界のスタンダードからかなりの後れを取っています。ですから、よほど優れたリーダーが出てきて、金融という業態自体をひっくり返すようなイノベーションでも起こさない限りは、これから伸びていくとは考えにくい。
江上 メガバンクに将来的な可能性があるかと聞かれれば、かなり不透明だと言わざるをえませんね。しかし、財務省を頂点とした金融ピラミッドを幅広く支えている地方銀行の中には、なかなか面白いところがある。「今は地元の産業がないから金融も振るわない。それなら銀行のほうから地元と一緒になって産業を興そう」という個性的な銀行も結構あるんですね。
お客さんから笑顔で預金を集めて、融資のときにはしかめ面で担保査定をする。そんな戦後のメガバンクがやってきた銀行業ではなくて、一緒にブタやウサギの飼育をする、あるいは、この果物は事業になるかと考えながら、融資をする。それが成功すれば、地元の発展につながり、結局は自分たちに利益が返ってくるという仕事ですね。行員の給料が高度成長期のメガバンク並みになるとは思えませんが、いわゆる「やりがい」はありますし、意外と伸びる可能性はあると思います。
勝間 ベンチャー的な業務に特化するということですよね。金融業でグローバル化しようとしても、私たちが英語のスピーカーではないというのは致命的です。だからグローバル化で大きな博打を打つよりも、江上さんがおっしゃるように、ドメスティックに特化して、まずは日本国内、そしてできればアジアを視界に入れた金融業をするほうが、はるかに将来性はあると思います。
小幡 これは金融業に限った話ではないんですけど、どの業種でもグローバル化を目指すべき企業と、ローカルに特化するのを目指すべき企業の二種類があります。これは同じ業種であってもしっかり区別して考えるべきだと思うんです。グローバル化を目指すのなら、確かに英語を話せない金融マンなど問題外です。でもローカルにお金を貸す仕事には、英語なんか必要ない。英語よりも細かな人間関係といった地域に密着した能力が必要です。
だから、絶対に消費者金融はなくなりません。「金を借りたい」というニーズは必ずあります。そのニーズは、大銀行では対応しにくい。ですから、これまでの消費者金融会社が不調でも、必ず誰かが新しいモデルを考えて、業態として復活すると思いますね。
(続きは本誌でお読み下さい。)
〔『中央公論』2009年11月号より〕