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日常生活は劣化し、貧困高齢者は激増。現役世代の負担は増え続ける――超高齢日本の未来年表

河合雅司(一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長)
写真提供:photo AC
 農業従事者の激減に伴い食料生産は不足し、公共交通機関の縮小・廃止やスーパーの撤退で「買い物難民」が激増する――。ベストセラー『未来の年表』シリーズで知られるジャーナリストの河合雅司氏が、これからの「超高齢社会・日本」で生じる恐るべき未来像を描き出す。
(『中央公論』2024年12月号より抜粋)
  1. 就職氷河期世代が老いて貧困化
  2. 「高齢者でも労働」が当たり前に

就職氷河期世代が老いて貧困化

 キーワードの三つ目である「貧困高齢者の増加」も深刻な課題だ。

 2050年には団塊ジュニア世代が75歳以上になり、この世代の一人暮らし世帯も急増するとみられている。2020年の約1.69倍にあたる704万世帯になる見通しだ。

 2050年に75歳前後となる世代は、就職氷河期と重なっている。非正規雇用が多く、年金保険料の納付が途切れたり、支払うことができなかったりして年金加入期間が短い人が少なくない。

 就職氷河期世代より前の世代にも、勤務先企業が倒産したり、リストラに遭ったりして転職や不安定な雇用に追いやられた人は多い。正規雇用であっても賃金上昇カーブが抑制されており、超低金利政策が長く続いた影響も手伝って十分な老後資金を蓄え切れないまま定年退職を迎える人が相当数出てくることが予想される。

 賃金が抑制された影響は、そのまま将来の年金受給額に反映する。しかも年金制度の変更がなければ基礎年金受給額の減額調整は2057年度まで続く予定で、2050年には現在の高齢者と比べると豊かとは言い難い高齢者が増えることとなる。

 厚労省の「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(財政検証)」が、65歳時点で受け取る年金額(現在の物価水準ベース)を年代別に試算して比較しているが、経済が今後大きく成長しない場合、就職氷河期にあたる1974年度生まれの39.1%は月額10万円未満となる。18.1%は月7万円未満だ。女性は57.1%が月額10万円未満になるとしている。

 政府の就職氷河期世代対策といえば就労支援や自立支援だが、こうした政策を今からいくら講じても、すでに中高年となったこの世代が若年期に失った「時間」を取り戻せるわけではない。救済策は間に合わず、このままならば2035年頃には生活保護受給者の激増が懸念される。

 高齢者の貧困化は、就職氷河期世代や勤務先が倒産した人などに限った問題ではない。老後資金を貯めて定年退職した人にも起こり得る。「人生100年時代」で65歳以降の人生が30年以上もあるとなれば、よほど流動資産がある人は別として、どこかの時点で老後の蓄えは底をつくだろう。こうした現実が国民の老後不安の広がりを招いている。

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