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新装版という戦略  カバーを変えただけで購入につながるのか?

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた 連載第11回

新装版にする意味ってあるの?

「新装版」は増補版や改版などとは違い、基本的に内容は同じでカバーが変わっただけです。それにはどんな意味があるのでしょうか。

まず考えられることは、カバーが変わったことで新たな読者を獲得できるということです。カバーはいわばその本の顔。眼鏡をかけている人が理知的に見えたりするように、本もカバーにイラストが描いてあるとライトな印象を、逆に有名な絵画などが描かれたりしていると、ちょっと堅い内容を想像させます。しかし、これでは限られた層にしか本が届かない、ということも同時に予想できます。ですので、例えば、これまでシックなカバーだった古典的名作を、若い人にも届けようと思ったときに、人気のイラストレーターや漫画家にイラストを描いてもらい新装版として生まれ変わらせる、といった戦略が考えられます。現に集英社からは太宰治の『人間失格』をマンガ『デスノート』の小畑健さん、川端康成の『伊豆の踊子』を『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦さんがカバーイラストを手掛けた文庫が発売されています。

以前の連載記事で取り上げた『告白』の仕掛け(「ベストセラーを熱量だけで大量受注してもらった新入社員は 「むしろ何もしないほうが売れるのでは?」から逆転できるのか!」https://chuokoron.jp/series/119344.html)は手書きの全面帯を、もともとのカバーの上に巻き直していました。これも、新旧のカバーはかなり印象が違って見え、『告白』をこれまで手に取っていなかった人たちがこの本を購入することきっかけになったことでしょう。

また、新刊棚に置かれるというのもメリットです。ほとんどの書店で新刊コーナーが設けられ、たいていのお客さんもまずそこを見ます。一番目に付く場所で再び展開される、ということは購買の機会を増やすことにつながります。

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