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スターよりワン・オブ・ゼム 〜資生堂CMからAKB48まで

橋本 治

スターよりワン・オブ・ゼム

 数年前に、資生堂がシャンプー系の新製品を発売するのに際して、当時のスター女優を五、六人まとめて一つのCMに出演させた。私は「さすがに資生堂、頭がいい!」と感嘆した。

「当時のスター女優」は、今でもまだスター女優ではあるけれど、彼女達が「突出したスター」であるのかどうかは分からない。そしてもし、彼女達が突出したスターであったとしても、彼女達の中の一人だけを起用してCMを作ったとしても、それが成功するかどうかは分からない。「AとBとCの中から誰を選べばよいか?」という問題は、「AであってもBであってもCであっても、そう大差はない」という裏事情を浮かび上がらせて、「だったらその前例はないが、三人まとめて」という新しい策を既に暗示していたりもする。

 これが他の商品なら「一人のスターのキャラクターに寄りかかる」ということも可能になるだろうが、女のための化粧品だと、「私はあの人に魅力を感じない、あの人のようになりたいとは思わない」という個別化、多様化を歴然と生み出してしまう。だから、女性用化粧品のCMは、「美しいに決まっているある特定のスターを専属キャラクターとして持続させる」か、「誰なの、あの人は?」と思われるような「無名の魅力ある新人」を起用するかのどちらかしかない。

 そういう時代が長く続いて、......

(続きは本誌でお読み下さい。)

〔『中央公論』2010年6月号より〕

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