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匿名・流動型犯罪グループ トクリュウの実態

岡邊 健(京都大学大学院教育学研究科教授)

白昼の銀座での時計店強盗も

 周知のように指示役のルフィらは、2023年2月、フィリピンから日本に移送された。同一グループの可能性がある強盗や窃盗は、10を超える都府県で数十件にのぼるとみられる。そして、これこそがトクリュウの最大の特徴であるが、逮捕された三十余人は、会社員、建設作業員、学生などさまざまで、事件ごとに実行犯は異なる組み合わせであった。事件全体を俯瞰すれば、確かに同一グループによる犯罪なのだが、そのグループを構成する実行犯役のメンバーは流動的であり、互いに面識がないことすらあるのだ。

 東京・銀座の高級時計店に仮面姿の集団が押し入った事件も、記憶に新しい。23年5月に起きたこの事件は、実行犯に16歳の少年が含まれていたことも相まって、社会の耳目を集めた。暴力団関係者から金銭を要求されていた1人が強盗の遂行を持ちかけられ、知人らを誘って敢行したと報じられている。前述のルフィらの逮捕後に起きているから、指示役は別にいたと考えられる。これもトクリュウによる犯罪とみてよいだろう。

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