新書はエンタメだ!
――ニシダさんにとって、新書はどういうメディアですか。
世間で流行っている話題やトレンドについて知りたいとき、一番手っ取り早く確かな情報がまとまって得られる媒体、というイメージです。ネットでも調べられますが、情報が貧弱なことが多い。新書は分量もちょうどいいし、入門的な知識を頭に入れるのに最適です。それでいて「勉強感」は強くなく、エンタメとして楽しめる。だから本屋の新書棚はよくチェックしますね。必ず何かしら気になるタイトルがパッと目に入ってきます。
先ほどの『ハンナ・アーレント』に出会ったのも、ちょうど同名の映画が公開されていた頃でした。映画を観てもっとアーレントのことが知りたくなっていたところに新書が出ていたので、手に取ったんです。新書は、僕らがそのテーマに興味を持ち始める絶妙なタイミングで刊行されるから、思わず読んでしまう。今年はNHKの大河ドラマ「光る君へ」の主人公が紫式部なので、平安時代や『源氏物語』についての新書がめっちゃ出ると思いますね(笑)。出版社側が、読者のそうした「知りたい」という気持ちを想定してくれているのがありがたいです。
あと、出版社ごとにカラーがあるのも面白いですよね。僕からすると、中公新書や講談社現代新書はテーマや内容がやや難しく、硬派な感じ。岩波新書はもう少し分かりやすくて、光文社新書はさらにやさしいイメージですね。集英社新書は攻めたタイトルが多い気がします。
タイトルも重要なポイントだと思います。気になっていたテーマや問題がずばり言い表されていると、思わず手に取ってしまう。『映画を早送りで観る人たち』がまさにそうでした。「うわ、ちょうど気になってた!」と。世論が「倍速で映画やドラマを視聴するなんてけしからん」という方向に傾く中、この本はそういう視聴者を一方的に揶揄することなく、しっかりした取材に基づいて背景や事情を明らかにしてくれていた。その視点の置き方にも好感が持てました。稲田さんの本は、実はあとに出た『ポテトチップスと日本人』(朝日新書)を先に読んでいて、すごく面白かったこともあり、迷わず購入。食べ物の歴史についての新書はどれも面白い気がします。あとはベストセラーになった『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治、新潮新書、2020年の2位)も、タイトルに惹かれて手に取りました。
今回の新書大賞のランキングに入ったタイトルを見ていても、読みたくなる本がたくさんありますね。『ネット右翼になった父』(鈴木大介、講談社現代新書)が特に気になるなあ。
――ニシダさんなりの新書を読む作法はありますか。
読み始める前に、著者のプロフィールと参考文献を確認することでしょうか。どんな人が書いたのか気になるし、参考文献がたくさん挙がっていると、「ちゃんと勉強した方が、僕たち一般人向けに分かりやすく書いてくれているんだな」と安心できるので(笑)。新書には、次に読むべき参考文献に飛ぶための中継地点のような役割もあると思うんです。
その後、目次と「はじめに」に目を通します。「はじめに」を読むと、著者がその本で何を書こうとしているか、問題意識が分かるので、すごく重要ですよね。