【新書大賞2024特別企画】読書芸人ラランド・ニシダが選ぶおすすめ新書ベスト3
ニシダ的「ベスト3」
――これまで読んだ新書の中で、面白かったベスト3を教えてください。
はい! 実は自宅から私物を持ってきました。
ニシダさんが自宅から持参した、面白かった親書ベスト3
まず第3位は、丸山真男の『日本の思想』(岩波新書)です。浪人中に通っていた予備校の現代文の先生に「大学生になったら読んだほうがいいよ」と薦められた本で、入学後に挑戦したものの、難しくて面白さが感じられず、途中で挫折していたのですが、最近読み直したら、分かる部分が多くなっていて嬉しかったですね。学術書だと難しすぎて手が出せなくても、新書なら読める。その意味で、新書らしい一冊だと思います。大学入試の現代文で初めて新書の文章に触れる人は多い気がします。
新書はポケットに入るくらいの薄さとサイズもいいですよね。僕は電子書籍も読むのですが、新書はやっぱり紙の本です。資料として手元にほしい学術書は得てして分厚くて重いし、検索ができるという意味でも電子のほうが便利ですが、新書は僕の中では、資料とエンタメの中間。読み物としても楽しんでいるので、紙がいいんです。
続いて第2位は、数年前に買った『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)。荒木先生の漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険』のファンなんです。帯に「企業秘密を公にする」とあるように、創作術の大事なエッセンスがすべて書かれているすごい一冊で、読むとよりいっそう『ジョジョ』を楽しめます。
作家の創作術に興味があるのは、自分でも小説を書くようになったからかもしれません。荒木先生には天才肌のイメージがあり、あれこれ考えずともご自身が面白いと思うものを描けば作品になるのだろうと思っていたら、全然違っていた。ストーリーも絵も、どう描けばキャラクターがカッコよく見えるか、めちゃくちゃ研究されていることが分かって、すごいな、と。ますます好きになりました。
荒木先生の新書を出版できたのも、漫画を多く発行している集英社の新書というレーベルのカラーが大きいと思います。漫画に関する新書は他にもありますが、僕はこれがいちばん好きです。
そして第1位は、瀬戸賢一さんの『書くための文章読本』(インターナショナル新書)です。言語学者が、文章を書く人なら誰もが気になる細かな悩みを解決してくれる本で、ちょうどエッセイの仕事をいただくようになった時期に読んだので響きました。
日本語は母語なだけに、文法についてあまり考えたことがなかったのですが、「~ました」「~でした」など「た」の語尾が連続して単調になるのをどうすれば回避できるかなど、文章技術を指南した超実践的な本です。今も小説やエッセイを書く際、参考にしています。創作術や作文術系の新書は、学生時代にもよく読みました。定番のテーマですよね。
(続きは『中央公論』2024年3月号で)
構成:髙松夕佳