人と人を一瞬でつなぐ言語の力
私が多言語を学び始めたのは、6年前、大学時代に留学していたスペインでの経験がきっかけでした。ス ペインには世界中、いろんな国から人が来ているので、アジア人の私に対しては、みんな英語で話しかけてくれるんです。そこで私がスペイン語で返すと驚いてくれて、表情が明るくなる。そういう場面を何度も経験するうちに、言葉は単なるコミュニケーションツールではない。人の心を開き、世界を広げる不思議な力があるのではないかと感じ、もっと多くの方とその方の母語で交流したいと思うようになりました。
以来、独学で学習を続けていて、まだ勉強中ですが、今のところ15言語(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語、ポーランド語、オランダ語、イタリア語)は、ある程度スムーズに会話できるようになりました。これまで動画では、簡単なフレーズ程度も含めると、60言語を使って110ヵ国の方と対話をしています。ネット環境の影響か、アフリカやオセアニアの島々の人たちにはまだお会いできていないので、今後に期待しています。言語学習の過程では、その国の文化や歴史も自然と学ぶことになるのでおもしろいです。
多言語を話せるようになった今は、その効果を日常生活でも感じる場面が増えています。
東京で街を歩いていて、外国人男性から道を尋ねられたときのことです。パキスタンの人だと思いウルドゥー語で答えたところ、ものすごく喜んでくれて。警戒心が一瞬にして解けていくのを感じました。「生活環境も風習もまったく違う日本での生活で不安を抱える中、母語を聞けたことがものすごくうれしかった」と涙ぐんだ彼の顔は、忘れられません。また、ポーランドからの留学生とポーランド語で話したときには、「ここ1年、ポーランド語をまったく聞かずに暮らしていたので、聞けて本当にうれしい。ポーランド語を学んでくれてありがとう」と、心から喜んでくれました。
南アフリカの元大統領であるネルソン・マンデラは「あなたが相手の理解できる言葉で話せば、それは相手の頭に届く。相手の母語で話せば、それは相手の心へ届く」という言葉を残しましたが、私はこの言葉が大好きです。
母語というのは、その人のアイデンティティそのものです。マイナーな言語であればあるほど、「な、なんで知ってるの!?」と大きなリアクションが返ってくる。母語で話しかけられた瞬間に変化する相手の表情をもっと見たいし、視聴者の方々に届けたい。
言語を通して相手と心がつながったときのうれしさには、国境や文化を超えた普遍性がある。それが視聴者の方々の心を動かしていると思いますし、私自身の活動の大きな原動力にもなっています。