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中国では「朝鮮族」が韓国カルト布教の橋頭堡に 統一教会もガンガン進出

現代中国に広がる新興宗教
安田峰俊

正統派よりも異端カルト信者が増える環境

上海応用技術学院人文学部准教授の徐瓊の論文「朝鮮族キリスト教の実態について」は、「韓国で似非宗教としての扱いを受けているものの大半を延吉において観察することが」できると述べている。

たとえば延吉市には新天地教会のほか、2014年に韓国で沈没事故を起こした旅客船セウォル号のオーナーが信仰していた救援派(クウォンパ)、教祖が女性信者八人に性的暴行を加えたことで有罪判決を受けた万民中央教会をはじめ、社会的に物議をかもしている複数の新宗教が進出している(なお、韓国国内では20203月末に万民中央教会の内部でも新型コロナウイルスの集団感染が発生。新天地教会の不祥事に続く問題として注目された)。

ゼロ年代に現地でひそかにプロテスタントの宣教にかかわった日本人牧師の倉山(本書第五章参照)も、かつて暮らした延吉市の状況をこう話す。

「新天地教会・救援派・摂理は本当に多くて、現地の主流派のクリスチャンが困っていた様子をよく覚えています。胡錦濤政権時代は外国人の宣教行為への取り締まりがゆるく、韓国からカルトの宣教師が大勢やってきていた。私の現地の友人の、当時高校生の娘さんによると、学校でクリスチャンといっても、同じクラスの仲間では正統派(主流派)のほうが少数で、他の異端カルトの信者のほうが圧倒的に多かったそうです」

韓国の宗教団体がまず朝鮮族に布教する理由は、文化や言語の差異がほとんどないという大きなメリットがあるためだ。

第一段階として言葉が通じる朝鮮族を信者にすれば、中国語が堪能な彼らを通じて他の地域の中国人(漢民族)への布教を進めることができる。中国では外国人宣教師の布教活動が認められておらず、そもそも外国人の行動自体に制約が多いため、中国国籍でありながら韓国発の教義をスムーズに内面化できる朝鮮族信者は、布教の上でかなり重宝されるのだ(ほかには北朝鮮に布教をおこなうために、北朝鮮と国境を接する中国の朝鮮族を信者に組み入れる作戦を取っている教団もある)。

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