米国のドナルド・トランプ大統領が4年ぶりにホワイトハウスに戻って以来、その言動が連日、世界を揺るがせている。デンマーク領グリーンランドの「購入」、パレスチナ自治区ガザの「所有」といった一見、荒唐無稽な「トランプ2・0」の外交政策の底流には、「中国との競争に勝つ」という究極の目的がある、と、アジア太平洋地域の安全保障に精通したパトリック・クローニン博士は分析する。日本や世界はどう向き合うべきか。トランプ外交について見解を聞いた。
(『中央公論』2025年4月号より抜粋)
(『中央公論』2025年4月号より抜粋)
- 石破首相に「うれしい驚き」
- グリーンランド「購入」の真意
石破首相に「うれしい驚き」
――2月7日にワシントンで日米首脳会談が行われました。トランプ氏が石破首相に法外な要求を突きつけるのではないかと心配されましたが、日米同盟の強化など日本側の期待に沿う内容で合意し、共同記者会見の雰囲気も穏やかでした。
トランプ大統領は就任早々、新たな大統領令を次々と出し、米国の政策の方向性に不確実性を生み出しましたが、日本については米国の強い関与が後退することはないと改めて約束しました。これは石破首相にとってはうれしい驚きでした。貿易その他の政策では今後も混乱が予想されるとは言え、少なくとも今回の会談では日米関係の「重大な変更」はなく、「継続性」が示された形です。つまり日米関係は、米国の地域及び世界戦略の「要石」であり続けるということです。それは両国共通の利益によるものであって、指導者どうしの個人的なつながりや相性だけで決まることではありません。
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