(『中央公論』2025年4月号より抜粋)
- 関係良好ゆえに報道されない
- 米国に対抗しつづけた歴史
関係良好ゆえに報道されない
カナダは今、熱く揺れている。
従来、日本ではカナダに関する報道は多くなかった。極めて良好な関係を持つG7の国同士にして、農産品・木材、鉱物エネルギー資源、自動車等では強力な貿易・投資のパートナーで、ともにTPP、APEC等のメンバーであるにもかかわらずだ。関係が良好すぎて、深刻な問題がないがゆえに、ニュースにならない面はあったであろう。
しかしここ最近、カナダに関する報道が増えている。米大統領選挙でのトランプ勝利以降は特にそうだ。次期大統領は、2024年11月25日に「就任初日に、カナダとメキシコからの全ての輸入品に25%の追加関税を課す」と表明。その4日後には、トルドー首相をフロリダ州パームビーチにある私邸「マー・ア・ラゴ」に招待しての夕食会談だ。加えて、「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」と発言し、トルドーを「州知事」と呼んだ。
そのトルドーは、約10年にわたり自由党政権を率いてきたが、25年1月6日、辞任の意向を表明した。3月には自由党の党首選があり、その先、早ければ4月にも連邦選挙が待っている。しかも、カナダは今年のG7議長国だ。
本稿では、トランプ政権誕生のインパクトも踏まえ、カナダの現状を記す。なお、分析・判断は筆者個人のものである。
(中略)
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