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廃業寸前サウナが「西の聖地」に......名店「湯らっくす」から見た熊本地震後の8年

西生吉孝(「湯らっくす」社長)

ヒントはサウナーのSNS投稿

 2017年、施設のリニューアルに際し、思い切ってサウナを主体に据えることにしました。というのも、熊本はもともと温泉どころ。郊外に名だたる温泉がある中で、市内で温泉を売りにしても、インパクトがないのです。一方、うちは父がサウナ好きだったし、私もサウナの勉強をしにヨーロッパまで行った経験がある。サウナでなら勝てるのではないかと思いました。

 リニューアル後、スタッフから「SNSで『湯らっくす』が話題になっていますよ」と聞いて驚きました。慌てて東京のサウナコミュニティの人たちの投稿をチェックしたところ、水風呂の水質が非常に重要であることがわかってきました。水道の蛇口をひねればいつでも上質な地下水が出るという、熊本で生まれ育った私には当たり前のことに、東京のサウナファンは盛り上がっていた。そこで水を売りにしようと決めて、押すと地下水が滝のように落ちてくる「MADMAX」ボタンを設置すると、人気に火がつきました。

 SNSの動向はその後も参考にしています。ブームも徐々に変化しており、リニューアル当初はサウナ自体の良さが最重要でしたが、その後水風呂に移り、今はなんといっても休憩所です。東京の新しいサウナ施設では、面積の大部分が休憩所に割かれているのではないでしょうか。

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