古墳を動画で見るブログを開設
古墳めぐりを始めてしばらく経った2014年8月、転機が訪れた。ただ訪ね歩き、古墳にカメラを向けるだけではつまらない。アイディアはないかと模索していた頃のことだ。長野県千曲(ちくま)市の森将軍塚(もりしょうぐんづか)古墳からの帰途、上信越自動車道で高速バスを待ちながらシャッターを押したところ、写真のつもりだったのが偶然映っていたのは、高速道路を猛スピードで走る車の先に葺石がキラキラと光る墳丘の動画だった。これはいける。さっそく、次の古墳めぐりから動画を多用することにした。
立体構造物である古墳の全体像は、動画だとわかりやすい。横穴式石室は、高さが低く長い羨道(せんどう)(埋葬場所への通路)を歩き、ようやく到達した先に天井が高くて広い「黄泉(よみ)の国」である玄室(棺のある部屋)が待っている。そのコントラストは動画でより鮮明になる。もっとも、細部を詳細に撮影する場合や研究目的ならば、静止画像に軍配があがる。
そのような経緯で15年5月、先輩諸氏のブログを参考に自分のブログ「古墳にワクワク」を開設し、訪問記、所在地マップ等とともに、YouTube(こちらも同名)にアップしていた動画を貼り付けることにした。記録としての価値があるのではないかと考えたのである。
当時は古墳を動画で撮るという発想があまりなく珍しがられたが、自分で見返してみると編集技術が未熟で、自己評価は最低のDランクと言わざるをえない。これでは記録としての価値も下がると思い、ようやく23年、より高度な編集ソフトをマスターし、現在、古いデータを再編集中だ。幸い、アクセス数は増えたが、新規で訪れた古墳の動画の編集もあり、作業が追いつかない。情報の正確さに加え、訪れた古墳の姿を2〜3分の動画で効果的に伝えるにはどうすべきか。ストーリーや見せ場づくりに頭を悩ませる。今のところ、視力の低下という副作用を伴うものの、シニアの脳の活性化にはよいようである。
(『中央公論』2月号では、古墳の愉しみ方、初心者向けの古墳、マニアックな「石室派」におすすめの古墳を紹介している。)
草野さんのブログ「古墳にワクワク」はこちら→https://kofunwodougademiru78.publog.jp/
1947年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門は政策過程論、日本の外交、国際協力。慶應義塾大学総合政策学部教授などを歴任。『国鉄解体』『アメリカ議会と日米関係』『政策過程分析入門第2版』など著書多数。