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"お子様政治"では日本は変わらない

対談●引退したから話せる政治のウラオモテ
森喜朗(元首相)×藤井裕久(民主党最高顧問) 司会 鈴木美勝=時事通信解説委員

安倍政権誕生に「ハラハラドキドキ」

──森さんは四三年、藤井さんは三五年間国政の場にいらして、さきごろ引退を表明されました。今日は過去を振り返りつつ、縦横無尽に語り合っていただきたいと思います。最初に、政権交代で誕生した安倍政権に対する評価についてお聞かせください。

 彼は後輩というより弟みたいに思っている。失敗しないでほしいと、ハラハラドキドキです。
 しかし、スタートは順調ですし、安倍カラーも出ている。勢いで突っ走ってコケなきゃいいが、という思いは正直あります。まあけれんみなく突き進むというのは、"長州の血"を引く快男児だからねえ。

──民主党は再び野党の立場になりました。

藤井 私がまず言ってるのは、「与党を経験したのだから、かつてのように瑣末なことで何でもかんでも反対するのはやめなさい」ということです。ただし野党民主党として、絶対に譲ってはいけない課題が二つある。
 一つは偏ったナショナリズムへの傾倒を許さないこと。日本の二〇〇〇年の伝統は誇るべきものですが、この一〇〇年の歴史の中には韓国併合、中国侵略など、間違ったこともあったわけです。そうした事実を「自虐的歴史観」の名のもとに消し去ろうとする動きには、明確に反対しないといけない。
 もう一つは、超金融緩和政策への過度の依存を許すな、ということです。金融はあくまでも実体経済の下支え。今の日本経済が抱える病根は実体経済の需給ギャップであって、金融がいくら良くなってもそれは解消されません。そういう考え方とは断固戦うべきだと申し上げています。

無礼な若手議員だらけでもう嫌になった

──三年三ヵ月ぶりに与党に復帰した自民党ですが、野党時代に再生に向けた努力をどれだけしたのでしょう?

 その「再生」っていうのがわからない。みんな簡単に「党の再生」とか口にするのだけれど、じゃあ自民党を具体的にどうすることなんですか? たとえば昔のように派閥が力を持って機能するようになれば、蘇ったことになるのか。でも派閥はだめだという人が、たくさんいるでしょう。

──派閥に関しては功罪あったと思います。ただ一九九三年に細川連立政権ができた頃から、絶対悪だと。

 お言葉を返すようだけど、当時、「功」の部分を言ったマスコミがいましたかな。(笑)
 ともあれ、世の中どんどん価値観も変わり人も変わる。藤井さんとか僕とかの世代と、今の若い人たちとはまったく人種が違うんですよ。人種が違う人たちに僕らの価値観を押し付けても、「何言ってんだ」でおしまい。

藤井 旧世代はひっこんでろとなる。

 そう。森なにがしも、藤井なにがしも、もう少しすると小沢なにがしも(笑)、みんな消えてくれ。そうすれば政治が再生する、と思っている人間がたくさんいるんでしょう。ただ我々からみれば、君たちに任せておいてこの先日本の政治は大丈夫なのか、と思っているわけですよ。

藤井 同感ですね。今の若い人たちは、国会議員である自分たちが何か言えば、すべてが動くと思っている。でもかつて国会でものごとがきちんと決まっていった裏には、あえて言えばカネのやり取りも含めた、広い意味での「情」があったんですよ。それがきれいさっぱり、なくなってしまった。

 藤井さんは二〇年近く大蔵省でキャリアを積んでから、政界に出られた。ところが最近は、入省二〜三年の、まだ課長にもなっていないような輩が議員バッジを付けるでしょう。そこそこ頭はいいけれど、傍若無人というか実に無礼な人間が増えましたね。物心ついた頃から勉強ひと筋で世の中を知らない、人情の機微にも疎い、財務省出身といったって経験も何も積んでないから、財政も税制も分からない。そんなのと藤井さんクラスが、同じように「センセイ」と呼ばれるわけです。
 本来若手はまだ自分が未熟者であることをわきまえていないといけないのに、俺は小選挙区を勝ち抜いた「大名」だ、と思い上がる。キャリアも資質も無関係に、みんな同格の政治家。困ったことにマスコミも役人も国民も、そう考えているんですね。私はそこのところが、今の政治が混乱する一番の原因ではないかと思っているんです。

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