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日本共産党が描く野党共闘と社会主義の時代 志位和夫

志位和夫(日本共産党委員長)

覇権主義と人権侵害の中国

─ソ連や中国は発達した資本主義に至らなかったために、正しい社会主義に移行できなかった?

 そう単純でもないのですが、ロシアも中国も資本主義の発展が遅れていました。生産力の水準が低く、自由と民主主義の制度もない、人間の個性の発展も未熟な段階から革命がスタートしました。そういう弱点を革命の指導勢力が自覚し、自由や民主主義の制度を作っていく努力が必要でした。ところがソ連はとくにスターリン以降、大量弾圧で専制国家にしてしまった。中国も「文化大革命」、天安門事件など人権弾圧をやってきた。さらに、ソ連は覇権主義で領土を拡張していくという致命的問題がありました。中国も、東シナ海や南シナ海などでの覇権主義的行動が大問題です。覇権主義と人権侵害という大きな弱点のためにソ連はつぶれ、中国は深刻な矛盾を抱えていると私たちは考えています。

─最近、改めてマルクスの『資本論』が注目されています。

『資本論』には格差拡大や環境破壊がどうして起こるのか、どうしたら解決できるのかについても、二十一世紀に生きる内容がたくさんある。それが今、『資本論』が世界でも日本でも注目される理由だと思います。そしてどちらも解決の根本的な道は社会主義への変革だということが書いてあるわけです。

 際限ない格差拡大を解決するには「利潤第一主義」という狭い枠組みを乗り越えていく必要がある。そのためには資本の手に握られている生産手段、つまり機械や工場・土地などを社会全体の手に移す。生産手段の社会化によって経済を「利潤第一主義」の狭い枠組みから解放する。これがマルクスの考えです。『資本論』は、資本主義社会の矛盾の分析だけではなく、それを解決するために社会主義への変革が必要だと明らかにした革命の書なのです。

『資本論』の中には、環境破壊のメカニズムについても叙述があるんです。マルクスは人間の生産活動を自然と人間の「物質代謝」の中に位置づけるんですね。「物質代謝」は生物学の言葉で、生命体が外界からエネルギーや自分の構成要素になるものを取り入れて、いらなくなったものを外に捨てる活動です。同じように、自然と人間の関係も、労働を通じて「物質代謝」が行われていると。ところが、資本主義的な生産は「利潤第一主義」による産業活動によって自然と人間との「物質代謝」の前提になっている自然環境を破壊していく。それをマルクスは「物質代謝の攪乱」という言葉で特徴づけています。当時、自然破壊が進んだのは農業分野で、資本主義的な農業生産によって、土地の栄養分がなくなり荒れ地になる。環境の破壊が起こり、まともな「物質代謝」は成り立たなくなる。この告発は、今日の深刻な環境破壊への的確な警鐘といわねばなりません。

 もちろん現在の地球規模での環境破壊の深刻さを考えると、世界が社会主義になるまで待っていられません。まずは資本主義の枠内で環境破壊を抑える最大限の取り組みを行うことが待ったなしの急務です。それをやりつつ、同時に、社会主義に進んでこそ根本的解決の道が開かれるということを大いに訴えていきたいと思います。

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