東芝の調査報告書の性格と内容
今回の報告書作成者は、会社の任意により設置される第三者委員会とは異なり、会社法上の「総会提出資料調査者」として株主総会で選任されており、取締役が調査を妨げた場合には、100万円以下の過料の対象となる。したがって、報告書からは、これまでの多くの第三者委員会報告書にみられたような依頼者に対する遠慮や忖度は一切排除されており、大変厳しい言葉で関係者を断罪している点に驚愕を覚える。
中でも、上記の「圧力問題」に関しては、事前に会社の監査委員会が外部弁護士事務所を使って調査し、経産省も巻き込んだ重層的な株主権行使に対しての問題行為を把握しつつも取締役会に報告もしていなかったことを挙げ、監査委員会の機能不全を指摘。
その上で報告書では、「東芝は、本定時株主総会におけるいわゆるアクティビスト対応について経産省に支援を要請し、経産省商務情報政策局ルートと緊密に連携し、改正外為法に基づく権限発動の可能性等を背景として不当な影響を一部株主に与え、経産省商務情報政策局ルートといわば一体となって株主対応を共同して行っていた」と結論付けている。
株式会社の最高意思決定機関である株主総会の運営に対する介入は市場への裏切り行為であり、図らずも、「国策」である原発事業や半導体事業などで深い関係を持ってきた経産省と東芝の関係までも露呈したといえる。
経営を監督する社外取締役も機能せず、経産省と一体となって総会の運営をゆがめた東芝経営陣の責任は重い。また、企業のガバナンス強化を進める政府の方針に逆行する経産省の責任も厳しく問われるべきだ。こうした背景を炙り出した本報告書の有する意味は、極めて大きい。