「再び第三者委員会の出番だ!」東芝のガバナンス不全を問う
賽は振られた!再びきた第三者委員会の出番
会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るべく、東証が公表する「コーポレートガバナンス・コード」は、今般2度目の改訂がなされた。そこでは、社外取締役が果たす役割への期待の増大と株主との建設的な対話等が強調されてきている。
しかし、今回の東芝の事案は、そうした取組みを水泡に帰すような真逆の行動がとられており、決して容認されるものではない。
東芝は、今回の報告書の指摘を真摯に受け止め、「外部の第三者の参画も得て速やかに客観的、透明性ある徹底した真因、真相の究明を行い責任の所在を明確化」するとのメッセージを公表した。今度こそ、株主のみならず、すべてのステークホルダーが納得のいく報告書を作成・公表できる、公正で真に独立した第三者委員会の設置が喫緊の課題といえる。
そのためには、これまでに公にされてきた数多くの第三者委員会報告書から得られた、多くの反省事項や改善事項等について、事前に十分認識しておくことが不可欠だ。また、「調査に規律をもたらし、第三者委員会及びその報告書に対する社会的信用を高めることを目的」として、2014年以降活動を続けている第三者委員会報告書格付け委員会の評価結果を参考にすることも有益である。
拙著(『第三者委員会の欺瞞』)での検証・評価でも再三指摘しているように、多大なコストと時間を投入しながら、結果として、不祥事からの脱却や企業価値の棄損を回復できなかった第三者委員会の事例は、枚挙にいとまがない。それは、第三者委員会の委員選任の不透明性や委員自体の不適格性、的外れの調査目的の設定、さらには、真因にたどり着けない調査手法の不当性等、留意すべき事項が山積しているからである。
東芝は、2015年の不正会計で糾弾されたガバナンス不全が、その後も、十分に修復されてこなかった。今後設置される第三者委員会には、今回の不祥事を最後の契機として、会社内部に蔓延するすべての膿を出し切る覚悟が求められている。
まさに、賽はふられたのである。
東芝は、自社の再生に向け、再任が予定されている社外取締役全員の適格性ないし妥当性についても、聖域なく、責任ある評価を行って出直しを図ることが期待されている。
八田進二
不祥事を起こした企業や団体が、外部の専門家に委嘱して設置し、問題の全容解明、責任の所在の明確化を図るはずの「第三者委員会」。だが、真相究明どころか、実際は関係者が身の潔白を「証明」する‶禊のツール〟になっていることも少なくない。調査中は世間の追及から逃れる‶隠れ蓑〟になり、ほとぼりも冷めかけた頃に、たいして問題はなかった――と太鼓判を押すような報告書もあるのだ。「第三者委員会格付け委員会」委員として組織を監視してきた会計のプロフェショナルが、第三者委員会を徹底分析する。
1949年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了、慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得満期退学、博士(プロフェッショナル会計学;青山学院大学)。現在、第三者委員会報告書格付け委員会委員、日本公認会計士協会「監査基準委員会有識者懇談会」委員等を兼任。著書に『不正-最前線』『開示不正』『会計・監査・ガバナンスの基本課題』『これだけは知っておきたい内部統制の考え方と実務』など多数。