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増田寛也×砂原庸介 「地方消滅」予測から10年――コロナ後の首都圏回帰

増田寛也(日本郵政株式会社社長)×砂原庸介(神戸大学教授)

人口減少は地域の衰退なのか

増田 自治体間での人口の奪い合いになってしまったのは、その通りだと思います。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の政策はいろいろなKPIを掲げていますが、一番大きなポイントは、ご指摘のように人口数です。

 各自治体は総合計画を作成する際に、将来の人口目標を設定します。私も岩手県知事に就任した際の総合計画で、当時140万人超の人口が将来的に140万人を切るという計画を作ったことがある。ところが、議会から強く批判されました。人口減少自体が地域の衰退に直結するという意識があるからです。

 国が地方版の総合戦略を作る時に「人口目標」を入れたことで、多くの自治体で人口減少が予測されていたにもかかわらず、いろいろな政策を投入することによって人口を増やすという無理な考えが出てきました。その結果、自治体が目標として掲げるそれぞれの将来人口を足し上げると、国の人口は将来的に5割増しになるという数値になった。(笑)

 しかし、自然増はほぼ出生率で決まるので、社会増に頼るしかない。つまり、隣の自治体同士で移住者を奪い合って目標をクリアしようとした。そのために「当自治体はこれだけ子育て支援の給付を行います」というバラ撒き競争になってしまった。

 現在、国の総合戦略は第2期に移り、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」となっています。その中で国は、この問題点を修正しようと働きかけているようです。

 けれど、人口減少が地域の衰退だという考えを改めるのはとても難しいのも事実です。

(続きは『中央公論』2023年6月号で)


構成:戸矢晃一

中央公論 2023年6月号
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増田寛也(日本郵政株式会社社長)×砂原庸介(神戸大学教授)
◆増田寛也〔ますだひろや〕
1951年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、建設省(現・国土交通省)入省。岩手県知事、総務大臣などを歴任。東京大学公共政策大学院客員教授も務めた。編著書に『地方消滅』(新書大賞2015)など。

◆砂原庸介〔すなはらようすけ〕
1978年大阪府生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士後期課程単位取得退学。博士(学術)。著書に『大阪』(サントリー学芸賞)、『分裂と統合の日本政治』(大佛次郎論壇賞)、『領域を超えない民主主義』など。
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