中央公論 2023年6月号
2023年6月号(5月10日発売)
特別定価990円(本体価格900円)
発売中
【 特集 】
東京再膨張――なぜ地方では生きられないのか
〔対談〕
「地方消滅」予測から10年
コロナ後の首都圏回帰 いかに人を動かすか
▼増田寛也×砂原庸介
女性がリードする地方からの人口流出
正規雇用の拡大が課題
▼天野馨南子
問われる日本型雇用と労働観
テレワークは広がるのか
▼濱口桂一郎
〔対談〕
上京物語の変遷
住まい・文化・交通をめぐって
▼岡崎武志×速水健朗
人の奪い合いから分かち合いへ
「関係人口」という選択肢
▼田中輝美
「タワマン文学」の旗手に聞く
湾岸のタワマンに住む地方出身者の悲哀
▼外山 薫
アニメはいかに首都と地方を描いたのか
ジブリ作品から「聖地巡礼」まで
▼藤津亮太
大地震後も「社会増」、北海道の小さな町の挑戦
▼宮下悠樹
時評2023
G7サミットを機に原子力の平和利用の新基準を
▼岩間陽子
坂本龍一氏の死去と日本未来主義の終焉
▼井上智洋
「させていただきます」とマスク
▼河野有理
韓国政府の「解決策」では解決できない
徴用工問題と日韓のこれから
▼木村 幹
尹錫悦大統領が「対日改善」で窮地に
韓国世論のカギを握る「2030世代」の動向
▼鴨下ひろみ
〔鼎談〕
異例の3期目、その"権力の劇場"
習近平は中国共産党を変えたのか
▼呉国光×宮本雄二×加茂具樹
中国外交の「帝国」化
国境をこえる影響力と経済安全保障
▼江藤名保子
〔対談〕
「強敵」安倍晋三を語る
その思想、政策、そして人柄
▼前原誠司×辻元清美
【 特集Ⅱ】
ノンフィクションの未来
〔対談〕
当事者の声があふれる時代に、「物語」にできること
▼武田 徹×石戸 諭
自由な時代の作家業
素人視点から書く勇気
▼川内有緒
〔対談〕
エコシステムをどう築くか
カギは「届け方」のアップデートにあり
▼瀬尾 傑×宮坂 学
忘れられたジャーナリスト
山川暁夫と『現代の眼』
▼ジェレミー・ウールズィー
学問と政治~新しい開国進取 安全保障編【第7回】
アジアを歩いて見えた政治と文化の接点
▼北岡伸一
「シン」流行は江戸時代から
新しさはなぜ"良いこと"になったか
▼西田知己
米アカデミー賞独占だが、シネフィルの評価はいま一つ?
『エブエブ』は21世紀の古典たりうるか
▼佐藤元状
好評連載
炎上するまくら【第78回】
AIが落語を書く時代?
▼立川吉笑
文品 藤沢周平への旅【第2回】
作家への途──「暗殺の年輪」
▼後藤正治
連載小説
美土里俱楽部【第2回】
▼村田喜代子
邪行のビビウ【第3回】
▼東山彰良
グラビア
海神の楽園㉚
▼撮影・文:伊勢優史
《Memories》 私の書斎
▼里見 弴
連載・コラム
ニュースの1枚
深層NEWSの核心
音楽には物語がある【第54回】
▼小谷野 敦
書苑周遊
新刊この一冊
▼窪田新之助
著者に聞く
▼四方田犬彦
気まぐれ映画館
▼三浦哲哉
Book Clip
2023年6月号【編集長から】
★コロナ禍では「ステイホーム」「自粛警察」など様々な標語や造語を耳にしたが、「デスク爆弾(desk-bombing)」という言葉を知った時の衝撃は忘れられない。英紙『フィナンシャル・タイムズ』に昨年秋に掲載されたコラムによると、職場で同僚の机に近づき、話しかけることを指す。テレワークや感染予防対策のため同僚と職場で顔を合わせる機会が減り、仕事上のヒントにつながる雑談の少なさを残念に思っていただけに、前触れなしの声がけは爆弾魔にたとえられるほどの迷惑行為になり得る、という指摘に絶句した。
★相手が目の前にいてもメールで伝える傾向はコロナ前からあり、3年続いたマスク生活で更に広まったかもしれない。5月の連休明けにコロナの感染症法上の分類は季節性インフルエンザと同じに引き下げられた。仕事の流儀は変わるか。
★コロナで止まっていた地方から東京に向かう人の流れが再び加速し、10年前に本誌が指摘した「地方消滅」はより現実に近づいている。今号の特集は「東京再膨張─なぜ地方では生きられないのか」。関西出身で入社2年目の同僚は「若い時しか挑戦できない」と上京して出版社に就職することを決めた際、両親に「東京でなければだめなのか」と猛反対されたという。彼女の話を聞くうちに特集のイメージが固まった。「デスク爆弾」を投下してよかった。
編集長:五十嵐 文