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松本 創 維新の組織風土と候補者集めの実情

松本 創(ノンフィクションライター)

間口の広さが「粗製濫造」に

 笹川府議の件に限らず、維新にはパワハラやセクハラの類い、暴言や問題発言、金銭をめぐる不正まで不祥事が多い印象がある。今年5、6月だけでも以下の件が報じられた。

 入管難民法改正案の国会審議で梅村みずほ参院議員が根拠を欠いた不適切発言(党員資格停止6ヵ月)▽福岡県飯塚市議による女性市議に対する不適切発言(厳重注意)▽大阪府議が政治資金収支報告書を期限内に未提出(離党勧告により離党)▽京都府議・市議ら3人が政治資金収支報告書を期限内に未提出(党員資格停止3~6ヵ月)▽大阪府市交野(かたの)支部幹事長が同支部長である府議に威圧的言動

 なぜこれほど頻発するのか。現職・元職の維新議員や秘書、支持者、それに担当記者らに聞いて回ると、共通する答えがある。

 一つは、人材確保の間口の広さと急速な党勢拡大で、議員が「粗製濫造」になっていることだ。たとえば会社経営者から維新の地方議員となった元職の男性は、自身の経験からこんなふうに語っていた。

「政治に意欲や関心を持っても、一般人ではなかなか既存政党への入口がない。自民党なら業界団体や地域活動を通じて地元議員と親しくなる、民主系なら労組や市民団体で活動するとか、何らかのパイプや経験が必要でしょう。普通に仕事をしている無党派の人間には難しいですよ」

 そんな時に目を留めたのが「維新政治塾」だった。維新が国政に進出した2012年に始まり、選挙に備えて数年ごとに開かれている。募集要項では「地盤・看板・鞄」がなくても、政治経験ゼロでも、議員や首長になれるとうたう。

「特に条件もなく、会費さえ払えば参加できた。一度のぞいてみようと気軽に応募しました。毎月講演があり、そこで人脈を作ったり、いろんな選挙を手伝ったりするうち、立候補の話をもらったんです」

 彼は2年ほどの活動を経て立候補し、当選できた。ただし、塾出身の候補者には問題もあったという。

「間口が広い分、資質に欠ける人も当然入ってきますよね。支部の議員が面接をするといっても、数回では人間性まで十分見極められないし、面接する議員に従順な、都合のいい人が選ばれる傾向もある」

 同様の指摘は、長く維新を取材する在阪記者からも聞いた。

「他党で公認されなかった人が維新なら行けたという例もあった。とにかく人を立てて票の掘り起こしを優先するので資質はあまり問われない。身体検査が甘い組織だとよく言われています」

 さらに、外見重視のルッキズムの傾向も感じると記者は言う。

「女性ならモデルやタレント、アナウンサーが多い。男性も若さや見た目のイメージ優先で選んでいる感じがしますね」

 維新に集まる議員志望者の職業や年齢については秘書の一人がこんな傾向を語っていた。

「創業者か2代目3代目かは問わず中小企業の経営者が多いですね。地元JC(青年会議所)のつながりとか。やっぱりある程度お金と時間がないと、選挙や政治活動はできないから。JCから自民党も多いけど、大阪以外の自民党は選挙区も役職も上が詰まってるから、いつ順番が回ってくるかわからない。雑巾がけなんかやってられない、早くポストを得て華々しくやりたいという人が維新に来るんじゃないですかね」

 松井も会社経営者から父親の後継で自民党府議となったが、引退後の著書『政治家の喧嘩力』で、議員になる人の望ましい条件や維新の公募選考について、こう述べている。

〈政治家を辞めても生活できる基盤があるほうが、議員の身分にこだわることなく、公約を一直線に、スピード感をもって実現できる〉

〈面接で重視したのは、「自立できていること」だった。選挙に落ちても、あるいは政治家を辞めても、自力で自分の人生を送れることを重視している〉

 政治家は長くやるものではなく、社会貢献的な副業として一定期間に限り従事するものという考えがうかがえる。議員報酬などを削る「身を切る改革」や「議員を身分にするな」という主張の背景だろう。

 実際、地方議員を数期務めた後、あっさり政治の世界を去る者も維新には珍しくない。先述した経営者の多さ、若さ、それに政治経験の浅さといった維新候補者の特徴は、松井の持論の反映とも言える。

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