「強い官邸」のパラドクス
二つ目の理由は官邸が強くなった結果、政策立案が円滑に進みすぎたことである。過去30年間に実施された政治改革、省庁再編、国家安全保障会議設置、公務員制度改革などの結果、首相は閣内や党内で強い権力を獲得し、官僚への影響力も増大させた。抵抗を受けることなく政策を実現することが容易になっている。
首相の政策に自民党の議員や一部の省庁が強く反対する場合、摩擦が生まれる。この結果、指導力のあり方や政策に関心が高まる。逆に、円滑に政策を実施した場合、注目が集まることが少なくなる。首相の政策立案が円滑に進みすぎた結果、ボトムアップ型の政策決定手法を採ったことと相まって、指導力や政策への関心が薄れるというパラドクスが生じたのである。
(中略)