予備校にとっては「冬」でも、生徒にとっては「春」
――予備校はこれからどうなると思いますか。
子供の数は減っていますし、授業動画が一気に広まったことで、予備校の生き残り競争はさらに激化するのは間違いありません。
ただ、これは必ずしも悪いことだけではないです。これまでは良くも悪くも、学生たちにとって、どの学校、どの先生にあたるかはある種の運だったと思うんです。それによって学力も左右されてしまう面がありました。地方であれば、そもそも予備校がなくて通えないということさえあった。
どんな場所でもネットさえつながれば、どの授業動画でも見られるようになると、そうした運の要素や格差は減っていきます。それによって選ばれなくなる先生が増えるかもしれませんが、むしろクローズドな環境で授業する側の技術が向上しにくかった今までのほうが問題で、ある意味で健全になるともいえるのではないでしょうか。教える側の競争は激化すると思いますが、学生にとってはポジティブなことだと思います。
――予備校はかつて学問への架け橋の機能も担っていたといいます。たくみさんのチャンネルでは、研究者や研究機関とのコラボ動画も積極的に配信していますね。
これまでの授業動画に限らず、大学で行われている研究の広報・アウトリーチなどにも活動の幅を広げていくつもりです。それこそ大学自体もこれまではクローズドな場で、一般の人に少し分かりにくくても、学問的には価値のある研究をうまく広報する方法がなかった。今はネット動画という武器がありますから、学問の面白さをより多くの人に知ってもらうためのお手伝いができればと思いますね。
(「中央公論」4月号では、この他にもカリスマ講師の条件、AIや授業動画が普及する時代における大学や学校の存在理由などについて語られている。)
ヨビノリたくみ(教育系YouTuber)
1993年神奈川県生まれ。横浜国立大学理工学部数物・電子情報系学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修士課程修了。2017年よりYouTubeチャンネル「予備校のノリで学ぶ『大学の数学・物理』」(略称:ヨビノリ)で、主に大学の数学や物理の解説動画を配信している。チャンネル登録者数126万人(26年2月現在)。