「散髪」に麦藁帽子を斜めに被って
浅草区金竜山、つまり浅草寺の近くに住むお粂は、たった数え18歳ですでに監獄に入れられた猛者。髪結いの長吉と遊郭に繰り込んだところ、女性はお断りと言われて大暴れ。とうとう警察を呼ばれてしまったという話だが、お粂のファッションに注目したい。
まずは髪型。一口に「散髪」といっても、切り下げ髪(今でいうワンレングスのボブ)からジャンギリ(坊主刈り)まで長さはさまざまで(画像参照)、お粂の髪がどの程度短いかはわからない。
銘仙の着物にお揃いの羽織は男着物なのだろうが、麦藁帽子を斜めに被るとはずいぶん遊び人風の着こなしである。
ちょっと芝居がかった格好であること、「扮〈やつ〉し」という表現から、普段は女性の格好をしていてこの時だけ悪ふざけをした可能性もある。
だとしたら、なぜ散髪なのか、謎が残る。
それとも、お粂の性自認は男性で、女性が好きなのだろうか。
男装と登楼の意図がどの辺りにあるのか、この記事だけでは測りかねる。