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福島原発事故は政府による災害だ

石破茂(自由民主党政務調査会長)×聞き手…田原総一朗(ジャーナリスト)

田原 復興に必要な金額は、どれくらいだと思いますか?

石破 計算できていませんが、おそらく二〇兆円では足りないでしょう。

田原 本来なら金額のメドをつけて、どうやって調達するのか具体的な話になっていてしかるべきですね。

石破 連立を持ちかける前に、その話をしていなければ。谷垣総裁への入閣要請を、岡田幹事長は直前になって聞いたそうです。なんと玄葉政調会長は、まったく聞かされていなかった。それ一つとっても、菅さんの本気度がわかろうというもの。なのに「断った」自民党が悪者にされてしまった。
 あえて付け加えれば、もしあの状態で谷垣総裁が内閣に入ったら、どうなっていたか? 与謝野さんが入閣して、「民主党のマニフェスト路線をさんざん批判していたではないか」「閣内不一致だ」と追及され、立ち往生しています。谷垣総裁は、間違いなく「第二の与謝野馨」になっていたでしょう。予算委員会で「谷垣副総理、4Kは見直しでいいんですね?」と聞かれたら、何と答弁したらいいのでしょう。

田原 政策協議のようなものがまったくやられてないというのは、ちょっと驚きです。でも、自民党にも責任があるんじゃないですか? 谷垣さんが、「私に入れと言うのならば、やるべきことをやれ」と、もっと強硬に言うべきだったのでは。

石破 民主党には衆議院だけで三〇〇人の議員がいます。参議院も含めれば、四〇〇人以上いる。にもかかわらず入閣要請をしたのは、自民党の手を借りなければこの事態を乗り切れないと判断した上でのことでしょう。有り体に言えば、人材がいないということです。まずはそれを率直に認め、手を借りるために必要なことをすみやかに実行に移す。それが総理の覚悟であり責務であって、基本的にわが方からあれこれする問題ではないですよ。

「救国内閣」の条件

田原 そうは言っても、政治がいがみ合ったり停滞を生んだりしている暇はありません。救援から復興へ、具体的に動き出さなければいけない。

石破 「復旧」ではなく、おっしゃるように「復興」でなければなりません。加えて東北を再生させることは、日本を再生すること。
 今回、被災地や原発で自衛隊員が活躍していますね。私は防衛庁長官、防衛大臣時代、「この国は戦争ができる国なのか」と常に自問自答していました。戦争ができない国は、戦争を回避できないと考えるからです。今回、一〇万人の自衛官が災害派遣に動員されています。わが党の提案で、予備自衛官の招集も行われました。しかし今、自衛隊は常備が二五万人弱、予備役が約五万人。予備役がこれしかいない国はどこにもないのですよ。この体制で、はたして有事に対応できるのか。
 例えばそのような国土防衛、もちろん災害対策とかエネルギーとか食料問題だとか、国の根幹にかかわるテーマを洗いざらい検証し、必要な形に作り上げていかなければなりません。復興を担う内閣には、そうした壮大なビジョンが不可欠です。

田原 さて、その復興を担う内閣ですが、自民、民主を中心とした「救国大連立」しかないと僕は思います。鍵を握るのは、やはり菅さん。当面、解散・総選挙が難しい状況の下では、「事態が一段落したら私は総理の座から降りるから、協力をお願いしたい」というくらいの姿勢を示す必要があるのではないでしょうか。

石破 「辞める」というのが筋です。折も折、震災のあった日に、菅総理に対する外国人からの政治献金が発覚し、参議院の決算委員会で追及が行われていました。菅政権に対する不信感は、頂点に達していた。

田原 翌日、問責決議案が提出されるはずでした。菅さんは、震災で救われたと思ったのでは。

石破 そこまで悪くは考えたくありませんが、そうした疑念を払拭したければ「辞める」と言わなければ。それなくして、「この人は捨て身で頑張ろうとしている」とはとれません。進退を明確にした上で、国民の審判をどう仰ぐのかを考えるべきでしょう。

田原 選挙はできないでしょう。

石破 いやいや、本格的な復興は国民が信任した内閣でなければ無理です。「一段落したら」というような曖昧なものではなく、例えば平成二十四年度予算案を通したら解散とか。

田原 なるほど、当座の「救援」が終わって「復興」の段階に入ったら総選挙というのはあるかもしれませんね。

石破 被災された方がとりあえず仮設住宅などへの移動を終えたとか、くぎりのついたところで信を問うことが絶対に必要です。

田原 「救国新内閣」の総理大臣には、誰が最適か。これも極めて大事な問題です。何人か僕の頭のなかに浮かぶ候補者に、石破茂の名前もあるんだけれど。

石破 我々が選んだ谷垣総裁の下に一致していく、自民党にそれ以外の選択肢はありません。
 繰り返しますが、今度の解散・総選挙は党利党略の政争がらみなどではなく、東北の復興を通じて日本を作り変える内閣を選ぶためのものです。早くその段階に進めるよう、当面は被災地対策に全力を挙げる所存です。

(了)

〔『中央公論』2011年5月号より〕

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