コロナで二極化する大学生
では、全部オンライン授業でいいかというと、もちろんそんなことはない。前述の文科省の調査でも、オンライン授業の悪かった点として、「友人などと一緒に授業を受けられず、寂しい」が最も多い回答となっている。
2021年度に入ってから対面授業の割合も増え、文科省の調査によると後期の授業の7割以上を対面で行うと答えた大学は全体の83%で、2020年度後期の31・5%から大幅に増加、徐々にこの課題も解消されつつあるが、同じ大学生の間でも二極化の傾向が見られる。
一方の学生は、オンライン授業を上手く活用し、浮いた時間でSNSも活用しながら積極的に外部のコミュニティに参加したり、アルバイトの掛け持ちによって収入を増やしたりしている。また、地方に移住し、地方創生に関する活動を行っている学生もいる。
もう一方の学生は、大学外で上手くコミュニティに参加することができず、メンタル的に厳しい状況に置かれ、アルバイト先も見つけられず、経済的に困窮している。特に、地元の友人が周りにいない「一人暮らし」の地方出身者にこのタイプが多い。
実際、休学者の数は、2020年度に比べて2021年度の方が若干増加しており、その理由として、海外留学が減少した代わりに、学生生活不適応・修学意欲低下(6・1%)や心神耗弱・疾患(8・4%)が増加している。以前から、ネットワークの強さなどを示す「ソーシャルキャピタル」の差は個々人にあったが、対面の機会が限定されたことによって、より顕著に差が開くようになっているのである。
そのため、今大学に求められるのは、オンライン授業の「功罪」を見極めた上で、通常時にもオンライン授業を取り入れながら、今の環境に上手く適応できていない学生へ手厚いフォローを行うことである。
授業に関しては、東京大学などの例が参考になる。東京大学では、ほとんどの大学が2020年度の授業開始を遅らせる中、学事暦を変更することなく、全ての授業をオンラインで行った。
その際、オンライン授業のサポートをする「クラスサポーター」制度を開始。クラスサポーターとは、TA(ティーチング・アシスタント)よりも軽い負荷でオンライン授業を支援する学生のことで、具体的には、Zoomの設定をテストしたり、授業中に不具合があればそれを教員に伝えたりするものだ。学生にとっては、コロナ禍でアルバイトが減った代わりの収入源にもなり、一石二鳥の取り組みになっている。他にも、チャットボットを開発するなど、相談体制を充実させ、新入生を中心に学生が孤立化しないよう取り組みを進めている。
また、大学によっては、フードバンクと協力しながら、アルバイトができずに収入が減少している学生をサポートするため、一人暮らしの学生に野菜や米などの食料や食券を無償で提供したり、朝食を配ったりしている。筑波大学では、2021年1月に、20トンもの食料支援を行ったが、約3000人が行列を作り、食料が足りなくなったという。
こうした取り組みが行われていることに加え、社会全体が徐々に「日常生活」に戻りつつあるため、2021年度は以前より困窮している学生が減っているように感じるが、それでも一定数の学生が精神的、金銭的な困難を抱えており、引き続き支援が必要な状況である。