同類婚がもたらす格差
海外における世帯間の格差研究では、学歴や所得・給与水準が似通った男女の結婚――同類婚の増加が世帯間の所得格差を拡大しているという指摘が多い。
女性の高学歴化や所得水準の改善がみられる以前、既婚女性の労働供給は、夫の所得が高いほど妻の就労率が低い(夫の所得と妻の就労率が反比例する)という「ダグラス=有沢の法則」によって特徴付けられていた。例えば、年収1000万円の夫と専業主婦の世帯と、年収400万円の夫と200万円の妻からなる世帯があったとしよう。このとき、夫の年収には2・5倍の差があるものの、世帯年収でみるとその格差は約1・7倍にまで縮小する。
単純化するならば、かつての日本の世帯の多くは正社員男性と主婦、または非正規社員女性で構成されていた。この性的役割分業が格差の顕在化を防いでいたというわけだ。ちなみに、2000年代以降のデータにおいても妻の就労が家計間の格差を縮小する傾向がある。2012年以降の格差指標の改善は、安倍政権下での失業率の大幅な低下の傾向にともない既婚女性・高齢者等の就労が促進されたことにも一因がある。
一方、日本でも高所得者層の共働き世帯の割合が増加している。この傾向に同類婚志向が加わると、家族という仕組みは世帯間の格差拡大要因となる。ちなみに、2010年から15年に結婚した初婚者が相手と出会ったきっかけの約71%が「職場や仕事で」「友人・兄弟姉妹を通じて」「学校で」となっている(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」)。学校はもとより、交友関係の中で出会う相手が自身と近い属性となることは想像に難くないだろう。さらに徐々に進んできた雇用の場における男女間の待遇差の縮小によって、職場での出会いも同類婚につながりやすくなっている。
夫が高収入な家計ほど妻の稼ぎも多い状況になると、家族は格差縮小の要因としては機能しなくなる。それどころか格差を拡大し、さらには格差の継承傾向の強化にもつながる。