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玉巻弘光 たばこ規制について考える

玉巻弘光(東海大学名誉教授)

「望まない受動喫煙」を防止する

 ただ、たばこがお酒や砂糖とは大きく違う点があります。煙が他人の健康に影響を及ぼすことが明らかなので、「他人の喫煙の影響を受ける人」の健康を守るためのたばこ規制が求められるのです。

 そこで受動喫煙をどう防ぐか、という問題が出てくるのですが、私は、受動喫煙そのものを完全になくすことではなく、法的に看過できない程度まで健康に影響を生じさせる「望まない受動喫煙」を防ぐという視点が大切だと考えます。人間は、一切他人に影響を及ぼさずに生存することはできませんし、あらゆる社会経済活動は何らかの形で人々の健康に影響を与えます。だから、許される範囲の影響と許されない範囲の影響を区別すべきだ、というのが法律家としての私の発想です。

 私が携わった神奈川県の受動喫煙防止条例は、「望まない受動喫煙」を防止するという考え方をベースに制定されており、すべての受動喫煙を排除しようとするものではありません。では、許される受動喫煙と許されない受動喫煙の違いは何なのか。

 たとえば、いくら換気をしていたとしても、会議室など室内では煙がこもってしまう。たばこを吸わない人はこれではたまらないので、室内での喫煙は規制すべきです。

 しかし、屋外ならたばこの煙も大気中に直ちに拡散してしまう。何らかの微粒子は飛んでいるはずですし、においもありますが、それが法律で排除しなくてはいけないほどの健康被害を他者に及ぼすというエビデンスは、私の知る限りではありません。また、たばこの煙に含まれる有害物質のほとんどすべては、ほかの発生原因からも生じています。タールや一酸化炭素、ホルムアルデヒドなどはその例でしょう。

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