団塊世代の「生涯」――ケア負担の面で有利
団塊世代は、その親の世代と比べると、20歳時平均余命が10年ほど延びている。自分の親とは早くに死に別れている人が多いが、自分は成人後の子と長く付き合う世代だ。しかも子ども数が少なく、さらに子世代(団塊ジュニア)の出生率の低さもあり、孫の数も上の世代より格段に少ない。つまり団塊世代は、「少数の子・孫と、長い時間を過ごす」世代なのだ。団塊世代の親の世代が「多数の子・孫と短い時間を共有する」のとは対照的な人生経験だと言える。
団塊世代はきょうだいが多く、長男でなければ都市部に移住してサラリーマンとして生活することが多かった世代である。団塊世代が就職した頃は高度経済成長期であり、働き盛りの時期もまだ安定成長期だったので、男性の所得や雇用は比較的安定しており、その妻の多くは主婦あるいは主婦パートだった。子育て期が圧倒的に短くなって会社勤めはしやすくなったはずだが、まだまだ女性がフルタイムで働くことが珍しい世代で、多くがパートタイム労働に従事していた。団塊世代の女性は、まさに主婦家庭の時代の成熟期を過ごしてきたのだ。
団塊世代の婚姻率は、上の世代に比べると若干低くなっている。団塊世代が30歳代後半になるのは1985年前後であるが、この時点での30歳代後半の未婚率は男性で14・2%、女性は6・6%である。特に男性の未婚率は、親世代に比べると3倍ほどにもなった。ただ、全体的には「生涯未婚」はまだまだ珍しい世代であると言える。
団塊世代は、自分のきょうだいは多いが、自分の子は少ない世代だ。きょうだいが多く、かつ親世代がそれほど長生きしなかったので、親の介護の負担は比較的軽く済む。たとえば7人きょうだいであれば、親の面倒はたいてい長男とその配偶者が見るので、残りの6人は(長男に嫁いだのでなければ)基本的には負担免除になる。親の世代と違って子が7人いるということはほぼなく、たいていは20代のうちに2人の子をもつのみで終わる。子育て期間も上の世代と比べると非常に短い。
人生にはいろいろな側面があるとはいえ、団塊世代は、ケア負担の面ではかなり有利な世代であったと言えよう。ただ多くの場合、子育てにおいて両親をあてにできなかったということは、指摘しておくべきかもしれない。