日大の学祖・山田顕義
学校法人日本大学は1889(明治22)年10月、日本法律学校として創立された。いわゆる旧制専門学校である。ときの司法大臣である山田顕義が大学創立を推し進めたとされ、日大の学祖に位置づけられる。
山田顕義は長州藩士だった山田顕行の長男として現在の山口県萩市に生まれた。長沼流兵学者だった伯父の山田亦介の影響で、兵学を学んだとされる。亦介はかの吉田松陰に兵学を教授した人物とされ、長州藩の軍制改革総責任者として洋式海軍の創設などに尽力した伝説の人物であり、顕義の父である顕行は幕末の1866(慶応2)年に長州藩の海軍頭取に就任している。偉大な亦介の甥にあたり、顕行を父に持つ顕義はのちに吉田松陰の松下村塾に学んだ。
〈山田顕義は、当時の法学教育は欧米法が主流で、日本の歴史や文化から乖離した知識を教えるものであり、現実に即した日本法学の研究こそが喫緊の課題と考えていました〉
日大HP〈日本大学の歴史〉にはそう記されている。そこにはもとより〈高度経済成長期の日本大学を牽引〉した人物と古田重二良の姓名も刻まれている。世界に類を見ない巨大な私立大学グループを築いた古田の足跡には光と影がある。改めて日大の暗黒史に光を当てる。(敬称略・つづく)
森功(ノンフィクション作家)
1961年福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業。新潮社勤務などを経て2003年に独立。2018年、『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』『国商 最後のフィクサー葛西敬之』など著書多数。