日大事業部の消滅
〈学校法人日本大学の子会社・日本大学事業部(東京都千代田区、田中康久代表清算人)が昨年12月31日付で解散した。同月9日の臨時株主総会で正式決定された。同社は今後清算手続きに入る〉
2023(令和5)年1月30日付の『日本大学新聞オンライン』は〈日大事業部が解散〉と題してこのように報じた。
〈同社は2010年、同法人が100%出資して設立した事業会社。井ノ口忠男元理事らによる背任事件の舞台となったことから、昨年4月7日に同法人が文部科学省宛てに出した文書「学校法人日本大学の前理事長及び元理事に係る一連の事案に対する本法人の今後の対応及び方針について(回答)」で、同社の昨年末での解散が示されていた〉
田中英壽が理事長に就任した2年後の2010年以来12年続いた日大事業部は22年12月、会社そのものが消滅した。新たに理事長に就任した林真理子はこれを日大改革の最大の成果と位置付ける。かつて日大帝国に君臨した元理事長の田中英壽肝煎りで設立された会社だけに、諸悪の元凶のように見られてきたわけである。保険代理店事業だけは新しく日大本部に設置された「日本大学キャンパスサポートオフィス」が承継することになったが、それまでの食堂や売店の経営、自動販売機事業、備品購入にいたるビジネスについては、各学部が独自におこなうことになった。
「林理事長が元理事長の悪の根を断ち切ろうとした」
日大事業部の解散については、マスコミもそう絶賛した。だが意外にも、大学内部からは称賛より、むしろ不安の声が聞こえてくるのである。
「日大事業部のような大学本部が出入り業者との取引を管理する会社は、たいていどの私大にもあります。日大の場合は早稲田や慶応のそれと比べると最も遅い後発で、それまでは各学部の事務局が業者と組んで取引していて、田中理事長がそれを一本化したのです。そこを井ノ口らにいいように操られて背任事件の舞台になってしまった。それはそれで問題です。しかし、とどのつまり元に戻ったという話になります。それで、業者と学部という以前の癒着が復活するのではないか、と心ある職員たちは心配しているのです」
林体制になり、日大が田中支配から解放されたのは間違いない。だが、田中による統治というガバナンスが組織運営上、機能してきた側面もあったという。日大関係者たちはそこを危惧しているのである。田中支配には、たしかに光と影がある。いったいどのようにして力をつけてきたのだろうか。