中央公論 2023年9月号
2023年9月号(8月10日発売)
特別定価990円(本体価格900円)
発売中
【 特集 】
戦争が変える世界秩序──ウクライナの戦禍から考える
〔対談〕
ポスト冷戦期の転換点と「柔らかく分断された平和」
▼細谷雄一×板橋拓己
〔対談〕
危機に立つ国連と多国間主義
日本は安保理改革の旗手になれ
▼北岡伸一×水鳥真美
「21世紀のマーシャル・プラン」はなるか
歴史のアナロジーで考えるアメリカの限界と底力
▼村田晃嗣
勢力圏からアメリカを排し世界の中央をめざす中国
▼三船恵美
急成長のアフリカが求める国際関係
平和への鍵握るグローバル・サウス
▼武内進一
変質する日本の平和主義
戦争への想像力をいかに補うか
▼山本昭宏
軍事専門家がメディアで語り続ける理由
戦争を防ぐために軍事の常識を知ってほしい
▼高橋杉雄
時評2023
今こそ日韓エリゼ条約を
▼岩間陽子
LGBT理解増進法、「理解」が足りないのは誰なのか
▼井上智洋
君たちはどう生きるか
▼河野有理
プーチン・ロシアに及ぼす影響は?
プリゴジンの反乱の余波はまだ続く
▼保坂三四郎
学問と政治~新しい開国進取 安全保障編【第10回】
立教から東大に移籍 指導者の「卵」を叱咤激励
▼北岡伸一
〔対談〕
蛇が脱皮するように
歳を重ねて新しいことに挑戦する それが「学び直し」
▼五木寛之×下重暁子
【 特集Ⅱ】
信仰なき時代の仏教
安心の岸辺は残されているのか
▼山折哲雄
ケアラーズカフェ、フードパントリー、災害時の避難場所......
思いをかたちに──時代に合った社会貢献
▼戸松義晴
『月刊住職』を作って49年
日本のお寺はなくならない
▼矢澤澄道
1995年生まれの女性僧侶が語る
生きづらい現代にこそ知りたい親鸞の教え
▼片岡妙晶
集住する理由、日本語の壁
茨城県大洗町のインドネシア人たちはどう生きているか
▼助川泰彦
カレーから化粧品、都市開発にまで応用できるポテンシャル
スパイスの尽きない魅力
▼印度カリー子
群れの構造、観察学習、推理力......
魚類心理学が発見した驚きの知能と謎
▼益田玲爾
追悼 富岡多惠子
「ここにいていいよ」と言われて五十五年 僕にとっては最高の人だった
▼菅 木志雄/聞き手:島﨑今日子
〔対談〕
宮本武蔵の"荒ぶる魂"を取り戻せ
▼齋藤 孝×佐藤賢一
好評連載
炎上するまくら【第81回】
落語を聞くなら福井県!
▼立川吉笑
文品 藤沢周平への旅【第5回】
作風の転機――『用心棒日月抄』
▼後藤正治
連載小説
美土里俱楽部【第5回】
▼村田喜代子
邪行のビビウ【第6回】
▼東山彰良
グラビア
海神の楽園㉝
▼撮影・文:伊勢優史
連載・コラム
ニュースの1枚
深層NEWSの核心
音楽には物語がある【第57回】
▼小谷野 敦
書苑周遊
新刊この一冊
▼沼野雄司
著者に聞く
▼石岡丈昇
気まぐれ映画館
▼吉田伊知郎
Book Clip
2023年9月号【編集長から】
★ロシアと中国で、世界的に知られた人物が相次いで表舞台から消えた。6月下旬にロシアで反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジン氏と、中国で外相と副首相級の国務委員を兼ねていた秦剛氏だ。
★「ワグネルの乱」以降も、プリゴジン氏とされる人物の動画が投稿されたり、プーチン大統領が「会った」と話したりはしているが、ロシアの諜報活動に精通した保坂三四郎氏が本号に寄せた論考を読めば、プリゴジン氏は健在だとする情報を鵜呑みにする気にはなれない。刑務所から受刑者をかき集めてウクライナ戦争の激戦地に送り込むといった汚れ仕事を引き受けてきたプリゴジン氏は、そもそもはロシアの「裏の顔」であり、闇を抱えた人物だった。対する秦氏は外交官出身で、習近平国家主席の肝いりで異例のスピード出世を遂げた中国の「表の顔」である。その秦氏がロシアで反乱が収束した直後に忽然と姿を消し、さまざまな臆測が飛び交った末、1ヵ月後に理由の説明もなく外相を解任された。秦氏が外務省報道官だった頃、北京駐在の記者として何度か話したことがある。議論は大抵かみ合わなかったが、英国仕込みの洗練と愛嬌が印象に残った。
★どんな事情があるにせよ、人が一方的に社会から抹消されるような国家に世界の秩序作りは任せたくない。
編集長:五十嵐 文