中央公論 2025年5月号

2025年5月号(4月10日発売)
特別定価1100円(本体価格1000円)
4月10日発売
【 特集 】
米露接近、国際秩序の転換点
覇権国の誤謬、基軸国の無自覚
アメリカの暴走と日本の世界史的な使命
▼岩井克人
ミュンヘン、ヤルタ、スエズに学ぶ
ニヒリズムの時代に規範を擁護する
▼細谷雄一
孤立主義・最小国家という「常態」へ
トランプ「暴政」は民意に基づき長期化する
▼三牧聖子
メルケルの負の遺産、東西の格差と分断......
ドイツ、そして欧州は米露に対抗できるか
▼岩間陽子
経済安全保障政策に盲点あり
激変する「空のネットワーク」、日本は強靭化を急げ
▼伊藤恵理、鈴木 均
【 特集Ⅱ】
中間層の衰弱と民主主義の危機
〔対談〕
「分厚い中間層」の再構築に向けて
「成長と分配の好循環」をいかに実現するか
▼十倉雅和×伊藤元重
なぜ時代は中間層を必要としたのか
自由民主主義に欠かせないもの
▼吉田 徹
所得減税、高校無償化は正解ではない
理想なき政治が社会不安をもたらす
▼井手英策
日本型中流社会の変質
バーチャル世界で格差を埋める時代に
▼山田昌弘
〔ルポ〕
中流から没落する人たち
――世帯年収1000万円超でも不安が尽きない
▼小林美希
テクノ・リバタリアンと"敗者"の奇妙な共闘
中央集権か、分散か民主主義の未来図
▼橘 玲
【 特集Ⅲ】
大阪の底力
日本資本主義、芸能──海民の精神はどう育まれたか
八十島の上の大阪
▼中沢新一
明治維新、戦後復興......
名経営者たちが紡いだ「商都」の発展
▼北 康利
過去20年の万博を訪ねた研究者が読み解く
デジタル時代の「万博」の価値は何か
▼岡田朋之
時評2025
憲法問題が政治にもたらす悪しき分断
▼境家史郎
それでもなぜ、最低賃金の引き上げが必要なのか
▼渡辺 努
「さす九」揶揄は反差別か地域差別か
▼河合香織
〔対談〕
本を読むと「人格がよくなる」?
先生、教養主義ってなぜ没落したんですか
▼竹内 洋×三宅香帆
21世紀の『武士道』『茶の本』として
僕の書いた"IKIGAI"はなぜ世界的ベストセラーになったか
▼茂木健一郎
八潮市道路陥没はどうして起きたか
省インフラ化すれば日本は持続可能だ
▼根本祐二
【シリーズ昭和100年】
時代を築いた作家たち
腕力の司馬、洒脱の池波、そして叙情の藤沢周平
▼黒川博行×後藤正治
好評連載
ことばの変化をつかまえる【第2回】
方言はこう生まれる
――言語地理学者・大西拓一郎さんに聞く
▼水野太貴
皇室のお宝拝見【第14回】
伊藤若冲《動植綵絵》
▼本郷和人
炎上するまくら【第101回】
丸亀製麺にこの身の全てを
▼立川吉笑
連載小説
金波銀波 【第10回】
▼澤田瞳子
グラビア
皇室のお宝拝見【第14回】
▼本郷和人
中沢新一の大阪
連載・コラム
ニュースの1枚
深層NEWSの核心
書苑周遊
新刊この一冊
▼稲葉振一郎
著者に聞く
▼木村草太
このマンガもすごい!
▼トミヤマユキコ
Book Clip
2025年5月号【編集長から】
★細谷雄一先生の研究室にうかがった際のこと。おもむろに操作したPCから流れてきたのは、2022年に急逝された中山俊宏先生の動画でした。トランプ現象の混乱の中で、力だけを信じるような価値相対主義が広がる危険性を指摘した発言は20年11月のものですが、今こそ響く内容です。さらに強く印象に残ったのは、価値相対主義は賢そうに見える一方、規範や価値を訴え続ける人は時代遅れに見える、という指摘でした。たしかに「力こそが全て」という見方はクールですし、一面の真理があるとも感じます。トランプ政権の繰り出す政策に各国政府が右往左往し、また企業や大学がDEI(多様性、公平性、包摂性)推進を瞬く間に見直している現状を目の当たりにしていると、深くうなずきたくもなります。
★それでも、規範や価値なき世界の未来が明るいとは思えません。今号の2大特集で描いているとおり、国際秩序も国内の民主主義も大きな危機を迎えています。経済学者アルフレッド・マーシャルの「クールヘッドとウォームハート」という言葉が示すように、両者のバランスをとりながら少しずつ事態を改善していくしかないのでは......中山先生のダンディな姿と声を懐かしく感じながら、考えました。先生、『ロバート・ケネディ』の書籍企画、実現させたかったですね――。
編集長:田中正敏
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