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2019年9月号【編集長から】

<戦争を防ぐために、軍事を考える>

 敗戦からまだ13年、ヘイトスピーチめいた発言に共感する人もいたのでしょうか。大江健三郎氏は1958年6月25日の毎日新聞夕刊にこう書きました。<ここで十分に政治的な立場を意識してこれをいうのだが、ぼくは防衛大学生をぼくらの世代の若い日本人の一つの弱み、一つの恥辱だと思っている>。その前年、防衛大学校創設を主導した吉田茂は、防衛大生に対し、「君たちが日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。堪えてもらいたい」と励ましたといいます。

 平和憲法を誇る一方で、軍事を軽んじる。こうした態度が通用したのは、冷戦下で安全保障を米国に依存し、経済成長に専念できたからこそ。冷戦終結からもう30年、国際社会は様変わりしました。戦争をどう防ぐか、他人任せにせず、自分のこととして考えなければなりません。三浦瑠麗氏の論じる徴兵制は、そのきっかけとなるでしょう。

 今月号の特集は、「戦争をしないための新・軍事学」。複数の論者が憲法の国際主義に言及しました。国連で要職を務めた明石康氏は、ユーゴスラビア紛争で本格的な空爆を2回許可したと語りました。重い決断です。国際秩序の維持は簡単な目標ではありません。国際社会で名誉ある地位を占めるために、日本がすべきことは何でしょうか。
 戦後生まれの天皇陛下の時代、改めて「戦争と平和」を考えたい8月です。

編集長 穴井雄治