2019年11月号【編集長から】
<日韓対立を乗り越えるには>
「20世紀の遺産は、ここで清算をしなければなりません」。1998年10月、小渕恵三首相との会談を終えた韓国の金大中大統領は、記者会見でこう語りました。20世紀に起きた問題は、20世紀のうちに解決する。両首脳の強い意志が、「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップを構築する」とうたった日韓共同宣言に結実しました。韓国で日本文化が開放され、防衛協力も進みました。
蜜月は短く、様々な案件で対立してきましたが、元徴用工問題は深刻です。木村幹さんと浅羽祐樹さんによる今月号の巻頭対談で指摘されるように、国交正常化した65年体制自体を覆すものだからです。韓国の人々の不満は理解できますが、一方的に約束を破るのでは国際社会は成り立ちません。約束が守られれば、日本も譲歩できるはず。和解は双方向的なものという佐々江賢一郎さんの指摘は示唆に富んでいます。
小渕元首相は2000年1月の国会演説で、21世紀を担う人々に贈る言葉として、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』のせりふを引用しました。<ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつです>。
日韓は幸福に近づく道を探せるでしょうか。小渕氏と金氏に顔向けできないと嘆く両国民も多いはずです。
編集長 穴井雄治