2020年1月号【編集長から】

<2050年の世界を人口学から読み解く>

 和服姿のオバマ米大統領、かんざしを挿したメルケル独首相。富士山を背にする両首脳の風刺画に「日本化」のタイトルを掲げたのは、2011年7月の英誌『エコノミスト』です。改革先送りは日本のようだという批判でした。野田前首相はこれに発憤し、社会保障・税一体改革に向かう決意を強くしたそうです。

 人口減少と高齢化に悩むという意味で、多くの国々は今後、「日本化」するのかもしれません。国連の推計などによると、あと30年もすれば世界人口の増加速度は落ち着き、米国を除く先進国や中国なども社会の高齢化が進みます。21世紀は「高齢化の世紀」でもあるのでしょう。

 今月号の特集は「人口学に訊け! 2050年の世界地図」です。人口変動から世界と日本の将来を展望します。

 日本の急速な少子化は、バブル崩壊後の不況期と就職時期が重なった就職氷河期世代の未婚率が高いことが影響しています。非正規雇用対策や育児支援の遅れを考えれば、「少子化は人災」という今月号での出口治明さんの言葉は大げさではありません。もう一つの難題「地方消滅」も、我々が責任を負うべき人災といえます。
 文明の危機に瀕した未来の人類があらわれ、歴史の改変を試みる――。眉村卓さんの『ねらわれた学園』には、現代への警鐘が込められています。少子化に歯止めをかけ、人口減少社会の展望を世界に示す。令和の日本に、<未来からの挑戦>を先送りする余裕はありません。

編集長 穴井雄治