2020年2月号【編集長から】
<受験生をふりまわすな!>
共通一次テストや偏差値で鍛えられた人々にはロマンがない――。中曽根首相は1984年2月の国会答弁でこう述べました。偏見を感じますが、さすがと思わせるのは共通一次の問題を自ら解いてみたこと。1000点満点で200点も取れず、マークシート式について「初めてやった人間には、問題が与えられたときにどきまぎしちゃって解答を生み出す力が出てこないだろう」と答弁しています。
今月号の特集は「入試大混乱」。英語の民間試験入、国語と数学の記述式試験など、入試改革をめぐる混乱を考えます。
今回の入試改革に関わった人のうち、センター試験などの問題を自ら解いた人はどのくらいいるのでしょう。実態を踏まえず、理想ばかり求める姿勢が混乱の根底にあるようです。センター試験にないから高校生は記述式の勉強をしていない。マークシートはテクニックだけで高得点が取れる。こうした言説に根拠はあるのでしょうか。司法試験や国家公務員試験もマークシートを採用していますが、簡単だという話は聞きません。
主体性をはかるため、高校の調査書などを重視することも入試改革の柱です。調査書をデジタル化して活用することも検討されています。将来は、「人間性」まで採点されるようになるのでしょうか。
中曽根氏は「政治家とは歴史という名の法廷で裁かれる被告である」と語りました。歴史に対して、政策決定の責任を負うという迫力は見習わねばなりません。
編集長 穴井雄治