2020年6月号【編集長から】

<コロナ恐慌を脱するために>

 新型コロナウイルス感染が落ち着いたとして、その後の世界はどうなるか。大恐慌以来の不況、自国第一主義の広がり、社会の分断。悲観的な見方が広がっています。

 今月号の特集は「脱・コロナ恐慌」。経団連の中西宏明会長、連合の神津里季生会長はじめ豪華な布陣でコロナ恐慌からの脱出策を論じます。

 国際社会も大きく変容するでしょう。鈴木一人さん、細谷雄一さん、詫摩佳代さんの精鋭3氏による鼎談は、「アフターコロナの地政学」と題しました。鈴木さんは、中国を切り離すデカップリングは幻想だと指摘しています。

 一方、馬立誠さんは、論考「新時代に踏み出す中日関係」で、カントの平和論を踏まえつつ、価値観と社会制度の異なる日中が永久和平を実現できるかどうか、人類の重要な実験だと論じます。

 村上春樹作品に引用されたカントの言葉を思い出します。〈哲学の義務は、誤解によって生じた幻想を除去することにある〉。相互不信の中で言論や政治にも同じ義務があるように思います。

編集長 穴井雄治