2020年7月号【編集長から】

<コロナの時代の公徳心>

 大災害後に人々の連帯感が高まり、善意にあふれた理想郷が一時的に現出する。米国の作家レベッカ・ソルニットは『災害ユートピア』で、こうした現象が生じるのは、そもそも人々が「社会的なつながりや意義深い仕事」を望んでいるためだと論じました。
 日本では阪神淡路大震災後にボランティア活動が盛んになり、山崎正和さんは今月号で「新しい公徳心の目覚め」と評しています。度重なる災害は人々の自制心を鍛えたのかもしれません。新型コロナウイルス対策では、多くの人が自粛要請に応じ、困窮しつつも利他的に行動しました。こうした美徳を一過性にしないことが、感染症に強い社会をつくるのでしょう。
〔編集長:穴井雄治〕


 国会で審議された検察庁法改正案をめぐり、芸能人や著名人が意見を発信して注目を集めました。これまで政治に距離を置いてきた人たちによる積極的な意見表明。こうした動きが、選挙に行かない若い世代が政治を考えるきっかけになるのではと期待します。
 コロナウイルスの感染拡大は、国内ではひとまず落ち着いた状況です。ただ、その影響は、我々の生活や働き方を変え、政治や国際関係にも変化を促しています。どうせ変わるなら、いろいろな人が意見を出し合い、侃々諤々の議論をしながら、良い方向に変えて行きたいものです。
〔吉山一輝〕