「中央公論 2020年9月号」より電子版スタート!

2020年10月号【編集長から】

★「私の願いを広げれば、今回の経験が伝統的な日本の世界観、現実を無常と見る感受性の復活に繋がってほしいと考える。無常感は国民の健全な思想であって間違っても感傷的な虚無主義ではない」。本誌七月号の特集「コロナ・文明・日本」の中で、山崎正和さんはこう綴っています。コロナ感染症の収束が未だに見通せない中、評論家、劇作家として冷静な目で世の中を見つめていた山崎さんが、八月十九日に亡くなりました。「文明は自然との交渉のなかで勝ったことは一度もなく、何千年も暫時の妥協を繰り返してきたにすぎない」。今、私たちは当たり前の日常の変化に戸惑い、恐れや怒りの感情がいたるところに溢れています。自然との妥協が成立したとき日本人は山崎さんが願う姿になっているでしょうか。

★今月号の特集は公務員にスポットを当てました。行政改革は政治の主要な仕事です。これまで省庁再編や市町村合併に象徴されるスリム化、効率化の流れの中で、人員削減や組織の縮小が進められてきました。その努力は決して間違いではなかったでしょう。ただ、誰も経験したことのない災厄は、社会の最後のセーフティーネットが公的機関であることを改めて浮き彫りにしています。平時の行政と有事に対応できる行政。そのバランスをどうとっていけばいいのか。難題です。

編集長:吉山一輝