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2009年6月号【編集後記】

★「いわば霊魂のアウシュビッツともいうべき遺跡で、いまだ死んではいない人々の大量虐殺の墳墓と名づけてよいのかもしれない」(訳・伊藤哲)。四月十九日、七十八歳で逝去した英国の作家、J・G・バラードが一九六四年に発表した『終着の浜辺』の一節。水爆実験場となったエニウェトック島を、妻と六歳の息子を交通事故で失った主人公が、いずれ第三次世界大戦が起こるという確信の下、幻影を見、死者と語らい、そして破滅を受容しながら徘徊するという小説。

この時期、人類にとって終末とは手の届くところにあるリアルでした。★と過去形を使いましたが核の脅威は現在でも変わりません。にも拘わらず今の日本のこの能天気。核保有国の実験ミサイルが頭上を越えたというのに「けしからん」というだけで、国としてこの先、どうしたいのか何も見えません。★この点、さすがなのがアメリカ。北のミサイル発射の五時間後、オバマ大統領はプラハでの演説で、究極的に核廃絶を目指すと発言。思いつきではないようです。昨年一月、あるベテラン記者を囲む会合で話題になったのですが、米外交の大物たちが米紙に、もはや核拡散の防止にはstatus quoではなく全廃の追求しかないという提言を共同掲載。ここに来て一気に浮上しました。その間、日本では「けしからん」だけ。対等な同盟とかけ声は立派ですが、唯一の核使用国と唯一の核被害国のもつリアリティと構想力の差はいかんともし難いようです。(間宮)