2010年5月号【編集後記】

★「君たちは働く者の額にこのイバラの冠をかぶせることはできない。君たちは人類を金の十字架にかけることはできない」。一八九六年、アメリカ大統領選の民主党大会で、候補となったウィリアム・ジェニングズ・ブライアンが行った有名な「金の十字架」演説です。

うち続くデフレの原因を金本位制と断罪し、銀本位併用制への移行を訴えたもの。十九世紀の最後の四半世紀、金本位制採用国は、通貨供給を依存した金の産出が止まったため深刻なデフレの中。結局、新たな金山が発見されるまで続きました。★まるで現在のどこかの国とそっくり。今、我々の十字架となっているのは日銀かグローバリズムか諸説ありますが、根本は四半世紀も続く円高。昨今の中国の振る舞いを見ていると、言いなりにホイホイ為替調整に応じてきたことがアホに見えてなりません。しかし、アメリカ依存の国であるという国是がある以上、かの国の国内経済事情にリンクして自らの身の伸び縮みを甘受するしかないのです。★とどのつまり、何であれ「依存」は身を縛る十字架になるという教訓。これは国のみならず個人も同じ。畏き辺りにおかせられましても事情は下々と同じとのこと。ただ自分の個人史を振り返ってみると、自立とは不安定で寒々としたものでした。しかし、この過程をくぐらないと人生を自分のものにできません。果たして、国にとってこの過程はどういう風景をみせるのでしょうか。(間宮)