2011年10月号【編集後記】

★最近、よく耳にするのが「脱」という言葉。脱官僚に脱小沢、そして目下の一番人気は脱原発。★この「脱」はなかなかの曲者で、「賛成か反対かというレベルの議論をしたいわけではありません」とでも言いたげ。

そして安易な定義づけも許さない。だからときには、即時撤廃派も、数十年かけて少しずつ減らしていきましょう派も「脱原発陣営」にまとめられたりするので驚く。"大連立"を組んで「現状維持派」を徹底的に少数派に追い込むのには効果があるのだろうが。★山本七平はかつてこう書いた。〈「開発と環境保全」という「中庸」をいかにして求めるか。要請されるのは、常に(他の問題でも)「歯切れの悪い」回答である〉。やはり聞こえのいい言葉には注意したい」。(木佐貫)

★「一つの世界というものは所詮一つの夢にすぎないかも知れない」――本誌一九六五年一月号に掲載された入江昭氏の「近代日本外交の遺産」は、冒頭で前年の東京オリンピックのスローガン「世界は一つ」に言及して、その夢かもしれないことが実現されるために必要なこととは何かを問いかけていました。現在、日米安保ないし両国の同盟関係について、必ずしも活発な議論がなされているとは言えませんが、この二国間関係が世界の中で果たしている役割を見据えるとともに、たとえ「一つの世界」が夢だとしても、その夢の存在すら忘れてしまうことのないようにありたいものです。(吉田)