2011年11月号【編集後記】

★今月は野田"どじょう"政権をめぐる対談、座談会の連続だったが、その合間に行われたのが、"泥沼流"米長邦雄元名人と梅田望夫氏とのコンピュータ将棋対談。頂点を極めたのちに引退しながら、再び自らを鍛え直し、強敵に挑戦しようとするところは、まるで『ロッキー・ザ・ファイナル』。

"さわやか"な決意表明だった。★史上最年長で名人位を獲得する前、親子ほども歳の違う若手棋士に対して「先生」と呼びかけて教えを請うたというのは有名な話だが、最強コンピュータを倒すための準備も怠りないようだ。対局当日は、初手から目が離せない。★今月号で、「哲学する渡り鳥」太田と「愛妻日記」井之上が編集部からひとまず離れることになりました。(木佐貫)

★「ねえ、もし俺が就職できなかったらどうする?」。もう一〇年も前になる。就職活動も中盤に差し掛かり、それなりに煮え湯を飲まされていた初夏のこと。彼女はニッコリ微笑んで、私の背中をポンポンと二度叩いた。★「ねえ、今度『中央公論』編集部から異動になるんだけどどう思う?」。久々の晩酌に付き合ってくれた妻はニッコリ微笑んで、私の背中をポンポンと二度叩いた。★時は流れ、環境が変わる。あることの意味が明らかになることもあるし、分からなくなることもある。★ふいに携帯電話が震えた。画面を覗き込み、私達は声を失う。この後の話は、いつかどこかで。(井之上)