2012年2月号【編集後記】

★十二月十日皆既月食の夜、望遠レンズをつけたカメラをかつぎ、家のまわりをうろついた。驚いたのは、こちらが恥ずかしくなるほど立派な装備で「その瞬間」を待ちかまえる愛好家の多かったこと。

★なぜ月食は起こるのか。満月と新月と月食の違いは。どうして皆既月食中の月は赤く見えるのか。さて答えられますか。簡単なようでいて、人に説明するのは難しいですね。★3・11以降、原発や放射性物質の話題が引きもきらないが、みな、どこまで理解して語っているのか。「文系だから」などといって逃げていないか。自戒を込めて、改めて考える。★浮つかない言論を目指し、今年も編集を続けていきたいと思います。写真は、五月二十一日の金環食で再挑戦です。(木佐貫)

★十二月に入って、リクルートスーツに身を包んだ大学三年生をよく見かけるようになった。近ごろは就職活動を「シューカツ」と略すらしいが、どうにも馴染めなくて、青木先生と吉見先生の対談でも、編集者の特権を生かして「就活」とカギカッコをつけさせていただいた。珍奇な略語に抵抗感があるのは仕事柄か、年齢のせいか。★二〇一一年もさまざまな本に出会えたが、若松さんの『井筒俊彦』と『神秘の夜の旅』はとりわけ印象深かった。一冊の本をゆっくりなめるように読む楽しみを教えられた気がする。そうすると新年も「積ん読」が増えていく一方だろうけれども。(小野)